夏希side

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夏希side

怪我したばかりなのに、全然傍に居ようとしてくれない 心配してくれるけど 色々やってくれるけど そういう時、傍に居てもらいたいって気持ち 分からないのかと思うと 悲しくて…寂しくて… たいして痛くもないのに 痛いって心配させた 分からないのは雪のせいじゃない そんなの知ってて雪の事騙したら ちゃんとバチが当たった 買い物行って帰って来た雪から タバコの匂い たまたま偶然凄い確率で出会った友達と 抱き合って帰って来た 訳じゃないけど 構図的にはそうだ 誰も悪くない訳で 強いて言うなら 俺が雪を騙したりしたからな訳で けど… 電車に乗れば痴漢に合い 合コン行けば酔って男達に襲われて せっかく家に居ると自分で傷つけて 買い物行ったら友達と抱き合って どうして雪の周りでは こんなにも次々と色んな事が起きるんだろう 只でさえ雪の頭の中忙しいんだから そっとしといて欲しい 俺がくだらないヤキモチを妬いたら 絶対気分良くなかったのに ちゃんと説明して 俺の為に吐いた嘘だって謝って 俺が絶対喜ぶお昼ご飯作ってくれて それは、買い物してる時から考えてくれてた訳で ほんとに情けないと思うんだけど それでもやっぱり 一緒に横になってくれた雪からは タバコの臭いがしてて 雪の目まぐるしい毎日の中では 俺の存在なんて あっという間に消えていく 安心出来る様に付けた印も 記憶の彼方に飛んでって 何の役にも立ってない 俺が馬鹿みたいな事を聞くと 男らしくシャツを脱ぎ捨てた 分かってる 雪が思ってくれてる事 毎日毎日 色んな事考えなきゃならない頭の中に 俺の事まで増やしてしまったのに ちゃんと大切にしてくれてる それでも不安だよ どれだけ大切に思い合ってても 騙し騙し生きてる毎日が 急に終わる日が来るんじゃないかって どれだけ探して…探して…探しても 雪を見付けられない日が 来るんじゃないかって だってきっと どんなにどんなに 俺が印を付けたって 一瞬で忘れる出来事 また次々起こる それが あんまり大きな出来事だったら 簡単に終わらせちゃうんじゃないかって思う 俺に背を向けて寝てしまった雪に布団を掛ける そのまま触ったら起こしちゃうから 布団の上から抱き締める 「…ん…ん~…」 布団の上からなのに、ちょっと嫌そう ほんと…寝たら熟睡 そして 俺が居る事も忘れる 「雪…」 雪の髮に顔を埋める 「忘れないで…」 自分を傷つけたくなった時 死にたくなった時 少しくらい思い出してよ 白峰さんが父親だったら 凄く雪の事考えてくれたら 変わる? ちゃんと生きていける様になる? 死ぬ為じゃなくて 自分のやりたい事とか考えて 生きていける様になる? 「……父さん……これない……別の…」 父さん? 別の? 「何の夢見てんだ?」 楽しい夢見ろよ 雪の耳元に寄る 「ハンバーガー ハンバーガー ハンバーガー」 「……ん?」 「ハンバーガー ポテト コーラ」 「……ん…ポテト…」 「旨い 旨い」 「……ふっ………おいしっ…」 大丈夫か?こいつ マインドコントロールされそう 「高菜おにぎり 塩昆布 豆腐とわかめの味噌汁」 「……んっ...んっ...おいしっ…」 「ぶっ…!」 チョロ過ぎる じゃあ… 「……夏……好き…夏…好き…」 「………夏……イチゴ…」 その好きじゃない! ってか、イチゴだけが好きみたいになってるけど メロンだって、桃だって、さくらんぼだって、好きだからな? 「さくらんぼ頂戴?」 「……ん…?」 「イチゴ頂戴?」 「…んっ...いっぱい……あげる...」 なんでイチゴ限定? 「……夏…あげる…」 「ありがと。もうお腹いっぱい」 雪の中に 優しくて優しい雪が居る そのままだと生きていけないので 固くて冷たいもので覆うことにしたんだ だからきっと 雪はいつも凍えている 「雪…寒くない?」 布団の上から抱き締めると 「…ん~…」 布団の中に潜り込んだ ああ… だから雪は布団に潜るんだ 「雪…いつかそれ…溶かそうな…」 固くて冷たいものが溶けて そのままの雪が出てきても大丈夫な様に… 沢山沢山あったかいものあげるから 何時間経ったかな そろそろ起こさないと文句言われるかな 「雪…」 「………」 「雪…そろそろ起きる?」 こんなんじゃ起きないか 寝ててもいいんだけどなぁ… ご飯なんか、なんでもいい ずっとこうしてたい でも絶対激しく後悔するんだろなぁ 布団を剥ぐと くるんと丸まってる 何これ? 猫なの? 「ゆ~き、そろそろ起きる?」 「…ん~…」 仕方がないので 背中にキスをする ちゅっ 「…ふぅ..んっ…」 ん? 寝てれば背中大丈夫なの? ちゅっ ちゅっ 「…ふぅ…ぅ…ん~~」 つまりは 食べず嫌いみたいなもんか 思い込みだな 擦られた痕の 腰の傷に口付ける 「んっ…」 くそっ… 雪の色んなとこに 痕残しやがって… 思わずキスしながら 右の腰から脇腹を触ると 「…っ!!…なっ…?」 起きちゃった 起きたら、やっぱダメか? そのまま背中に触れない様に 脇に向かって手を上げてくと 「~~っ!…夏っ…やめろっ…」 やめろって… 「可愛く言ってくんないきゃ、やめれない」 「っ!…っ!…やめっ…やめてっ……」 ぐっと脇を絞めてるので 少し横にずらして触ると 「…はっあっ!…やっ!…やめろっ!」 学習能力のない奴め 「可愛く言って?」 「…くっ…おねがいっ…むりっ…~っおねがいっ…なつっ…」 可愛い 「んっ…やめた」 「~~~っ」 やめたのに… 余韻か? 「雪…まだくすぐったいの?」 ま、俺の耳みたいな体だからな 「ごめん。ちょっとやり過ぎた」 やり過ぎたか? こんなんじゃ ほんとに俺らできないぞ? でも、彼女とできてたんだよな? なんかその時だけ、スイッチ入るのか? ………全然動かないけど…寝た? 「お~い、起きないのか?」 上になってる手を触ると ビクッ! え? まだそんなんなの? 「ごめん、雪大丈夫?」 「……っぁい……~っないでっ…」 「え?何?聞こえなかった」 「お願い…だから…声…出さないで…」 声… 声にまで反応してんの? どっちが変態だよ 「はいはい。変態雪」 そう言ってまた布団を掛けてやる 不思議なもので 何でもない俺の声は 雪が好きだと言った時から 特別なものになった
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