彩雪side

1/1
前へ
/43ページ
次へ

彩雪side

待って ちょっと待って 家に戻り、ソファーに座って深呼吸をする 「す~…はぁ~…」 なんか…色んな情報入り過ぎて… 「す~…はぁ~…」 まず、雪君のあの怪我 トラブルって何? あんな…頬の色変わって… なんか…刃物で切られてた 柊崎(くきざき)君が、そんな事するとは思えないけど この前来た時、雪君の事聞いたら お風呂入ってるってしか言ってなかった あの後怪我した? なんか…言い争いみたいのしてたし でも、柊崎君は、その人達の事見てもいないって言ってた 人達って言ってたし違うんだと思う 人達…と雪君1人? そんな…勘違いとかで… あんな事する人達と付き合いあるの? 「はぁ~…さっさとその人達から離れなさい…って言いたい」 怖くなかったのかな… そんな訳ないよな 殴られたのは、不意打ちっぽく言ってたけど 切られるって… どんな状況… 凄く…怖くて痛かった… あ… 雪君がマスクしてたのって もしかして あの怪我隠す為だった? じゃあ…初めて会った時にはもう… 普通に話して笑ってた え? あの時怪我して帰って来たとこじゃないよね? いや、もうマスクで隠してたんだから違うよね 「はぁ~…直接聞きたい…けど、聞くのも怖い」 「母さんは、亡くなりました」 「今年の始めに亡くなったんです。それで、叔父さんのお世話になってるんです」 真優(まひろ)が…よく言ってた 「旭陽って綺麗な名前でしょ?」 「真優だって綺麗な名前だよ」 「私はあまり好きじゃなかったな。でも、彩雪が呼んでくれる様になって、好きになったよ」 「旭陽ね~。きっと彼女できた。この前聞いたら、顔真っ赤にして可愛いんだ~」 「姉に聞かれたら、そりゃ恥ずかしいんじゃない?」 「だって、だって、聞きたいじゃない!はぁ~…どんな子かなぁ」 「年下とは限らないんじゃない?」 「えっ?私達より年上?!」 絶対…真優で、雪君は俺と真優の子だ 「…真優…~~~っ…し…死んじゃった…」 なんで… 病気?事故? 早過ぎるよ… 雪君との生活… 楽しかった? 幸せだった? そんな風に思える余裕…あった? 「うぅっ…真優っ……っ真優……」 もう…会えないとは思ってたけど ほんとに…偶然でも…奇跡でも… 二度と会う事は出来ないんだ 「うっ……っく…うっ…うっ…ふっ…」 父親も居ないのに… なんで…真優まで…… 「うっぅっ…っっ…うっ…っく…」 「…大丈夫です。こんな事話したくらいで、別にどうにもならないです」 今年の初めって言ってた もう… そんな風に思えるもの? 「……頭撫でて貰えたのは、ラッキーです。俺、父さん居ないので…こんな感じなのかなって思いました」 「~っ…あれは…ヤバかった…」 雪君の前で泣いちゃいそうだった 俺も…小さい頃に父親亡くなってるから それでも、記憶の彼方に 何となく残ってる 雪君は… こんな感じなのかなって 想像でしか知らないんだ 「…っごめん…ごめんなさいっ…っ…うっ…」 なのに… 母親まで居なくなっちゃって… ヴヴ~ ヴヴ~ 葉山? 何?こんな時間に… 「…もしも…」 「しらみね~お前今、何処に居る?!」 酔っ払いだ 「家だよ?…っ…葉山、酔っ払ってるの?」 「いま、飲み会おわったからな~?」 「そうっ…楽しっ…かった?」 楽し… 真優も…雪君も… 楽しかった時間…どれだけ… 「たのし~わけ…あるか!なんで俺…モテね~の~?」 「……っ…っっ…」 葉山、大丈夫だよ 葉山は優しくて、いい男だよって 伝えてあげたいけど… 言葉…出ない 「ん~?なんだ~?お前泣いてんのか~?」 「…んっ…ごめんっ……また今度っ…話聞くねっ…」 「あ~?いま聞かせろ」 「いっ…今……ちょっとっ…上手く……話せないっ…からっ…」 「うるせ~…もう、お前ん家の前だろ~」 え? ピンポ~ン ガチャ 「はっ…葉山…なんで…」 「おじゃましま~す」 「え?葉山…」 「お前ん家…おちつく~から~」 ドサッ 勝手に入って来て、ソファーに寝転んだ 「おら、言ってみ~?聞いてやるろ~」 「…葉山…」 「おお」 「…俺のっ……俺の子供だった…やっぱり絶対そう…雪君…俺の息子…」 「…あ~?お前の子供~?ああ…彩雪の子供だからな~?雪でいいんじゃね~?」 「雪君のっ……母親っ…~~っ…死んじゃってたっ…」 「あ~?雪君の母親~?」 「真優っ……死んじゃった…うっ……うっうっ…」 ガバッと葉山が起き上がった 「雪君の母親…お前の…奥さん?」 「…けっ…結婚なんてっ…してないっ…けどっ……」 「死んだの?」 「うっ…今年っ…初めにっ……~っ死んだって…雪君っ…」 「…~っ待て…待て待て待て。どういう状況?その雪君は、お前の事父親だって知って、会いに来てくれたのか?」 「~~っ!違っ…たまたまっ…近所でっ……俺っ…知らなくって……イチゴっ…要らない?って……声掛けてっ……」 「え?何?お互い親子だって知らないで会ってたの?ってか…近所の子に、イチゴ要らない?って……ただの怪しいオッサンだろ。よく付いてきたな…」 そう…言われてみれば、そうかも そんな…考えなしに 知らない人の家付いてっちゃダメだ 「ふっ…うっ……雪君っ…俺の家のオモチャ見て…俺も全然余裕のないっ…家だったからって……大学生っ…~っ凄くっ…楽しそうにっ……~っ…それっ…俺のせいっ…俺のせいなんだっ…」 「お…お前……」 「なのにっ……真優までっ…居なくなって……雪君っ…1人ぼっち…」 「……そうだな…そうだけど、まずお前……前に言ってた大切な人がその人なんだろ?」 「…っ…そうっ…」 葉山… 酔っ払ってたのに 覚えてくれてたんだ 「はぁ~…じゃあ、まずはお前が、その人の為に思いっきり泣け」 そう言って、葉山が抱き締めてくれた 「…っ…葉山っ…」 「ん?」 「……っ…ほんとにっ…ほんとにっ…大切な人だったんだっ…」 「そうだろうな。俺達もうオッサンなのに、ずっと思ってたんだろ?どんだけだよ?思いっきり泣けよ」 「…~っ…俺がっ……泣くのっ…申し訳ないとっ…思うっ…けどっ…」 「あ?他の奴の事なんか知らねぇよ。俺がいいっつってんだから、俺の前で泣くのはいいだろ」 だって 俺が泣ける立場じゃない 俺のせいで真優も雪君も きっと…いっぱい泣いてきた けど… 「…っ…葉山っ……いっぱい…泣いてもっ…い?」 「おお。思いっきり泣け。土日休んだら、目の腫れも引く」 「…~~~っ!…うんっ…ごめっ…ごめんなさいっ……俺っ……」 「うん。言いたい事言っとけ」 「…っ俺…何にもっ…出来なかった……真優にもっ…雪君にもっ……真優っ……死んじゃった……真優っ……うっ…真優っ…~~っ!」 約20年 我慢してきたものを一気に吐き出して いつ…どうやって寝たんだか 覚えてない 気付くと… 葉山の顔があった
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加