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彩雪side
待って
ちょっと待って
家に戻り、ソファーに座って深呼吸をする
「す~…はぁ~…」
なんか…色んな情報入り過ぎて…
「す~…はぁ~…」
まず、雪君のあの怪我
トラブルって何?
あんな…頬の色変わって…
なんか…刃物で切られてた
柊崎君が、そんな事するとは思えないけど
この前来た時、雪君の事聞いたら
お風呂入ってるってしか言ってなかった
あの後怪我した?
なんか…言い争いみたいのしてたし
でも、柊崎君は、その人達の事見てもいないって言ってた
人達って言ってたし違うんだと思う
人達…と雪君1人?
そんな…勘違いとかで…
あんな事する人達と付き合いあるの?
「はぁ~…さっさとその人達から離れなさい…って言いたい」
怖くなかったのかな…
そんな訳ないよな
殴られたのは、不意打ちっぽく言ってたけど
切られるって…
どんな状況…
凄く…怖くて痛かった…
あ…
雪君がマスクしてたのって
もしかして
あの怪我隠す為だった?
じゃあ…初めて会った時にはもう…
普通に話して笑ってた
え?
あの時怪我して帰って来たとこじゃないよね?
いや、もうマスクで隠してたんだから違うよね
「はぁ~…直接聞きたい…けど、聞くのも怖い」
「母さんは、亡くなりました」
「今年の始めに亡くなったんです。それで、叔父さんのお世話になってるんです」
真優が…よく言ってた
「旭陽って綺麗な名前でしょ?」
「真優だって綺麗な名前だよ」
「私はあまり好きじゃなかったな。でも、彩雪が呼んでくれる様になって、好きになったよ」
「旭陽ね~。きっと彼女できた。この前聞いたら、顔真っ赤にして可愛いんだ~」
「姉に聞かれたら、そりゃ恥ずかしいんじゃない?」
「だって、だって、聞きたいじゃない!はぁ~…どんな子かなぁ」
「年下とは限らないんじゃない?」
「えっ?私達より年上?!」
絶対…真優で、雪君は俺と真優の子だ
「…真優…~~~っ…し…死んじゃった…」
なんで…
病気?事故?
早過ぎるよ…
雪君との生活…
楽しかった?
幸せだった?
そんな風に思える余裕…あった?
「うぅっ…真優っ……っ真優……」
もう…会えないとは思ってたけど
ほんとに…偶然でも…奇跡でも…
二度と会う事は出来ないんだ
「うっ……っく…うっ…うっ…ふっ…」
父親も居ないのに…
なんで…真優まで……
「うっぅっ…っっ…うっ…っく…」
「…大丈夫です。こんな事話したくらいで、別にどうにもならないです」
今年の初めって言ってた
もう…
そんな風に思えるもの?
「……頭撫でて貰えたのは、ラッキーです。俺、父さん居ないので…こんな感じなのかなって思いました」
「~っ…あれは…ヤバかった…」
雪君の前で泣いちゃいそうだった
俺も…小さい頃に父親亡くなってるから
それでも、記憶の彼方に
何となく残ってる
雪君は…
こんな感じなのかなって
想像でしか知らないんだ
「…っごめん…ごめんなさいっ…っ…うっ…」
なのに…
母親まで居なくなっちゃって…
ヴヴ~ ヴヴ~
葉山?
何?こんな時間に…
「…もしも…」
「しらみね~お前今、何処に居る?!」
酔っ払いだ
「家だよ?…っ…葉山、酔っ払ってるの?」
「いま、飲み会おわったからな~?」
「そうっ…楽しっ…かった?」
楽し…
真優も…雪君も…
楽しかった時間…どれだけ…
「たのし~わけ…あるか!なんで俺…モテね~の~?」
「……っ…っっ…」
葉山、大丈夫だよ
葉山は優しくて、いい男だよって
伝えてあげたいけど…
言葉…出ない
「ん~?なんだ~?お前泣いてんのか~?」
「…んっ…ごめんっ……また今度っ…話聞くねっ…」
「あ~?いま聞かせろ」
「いっ…今……ちょっとっ…上手く……話せないっ…からっ…」
「うるせ~…もう、お前ん家の前だろ~」
え?
ピンポ~ン
ガチャ
「はっ…葉山…なんで…」
「おじゃましま~す」
「え?葉山…」
「お前ん家…おちつく~から~」
ドサッ
勝手に入って来て、ソファーに寝転んだ
「おら、言ってみ~?聞いてやるろ~」
「…葉山…」
「おお」
「…俺のっ……俺の子供だった…やっぱり絶対そう…雪君…俺の息子…」
「…あ~?お前の子供~?ああ…彩雪の子供だからな~?雪でいいんじゃね~?」
「雪君のっ……母親っ…~~っ…死んじゃってたっ…」
「あ~?雪君の母親~?」
「真優っ……死んじゃった…うっ……うっうっ…」
ガバッと葉山が起き上がった
「雪君の母親…お前の…奥さん?」
「…けっ…結婚なんてっ…してないっ…けどっ……」
「死んだの?」
「うっ…今年っ…初めにっ……~っ死んだって…雪君っ…」
「…~っ待て…待て待て待て。どういう状況?その雪君は、お前の事父親だって知って、会いに来てくれたのか?」
「~~っ!違っ…たまたまっ…近所でっ……俺っ…知らなくって……イチゴっ…要らない?って……声掛けてっ……」
「え?何?お互い親子だって知らないで会ってたの?ってか…近所の子に、イチゴ要らない?って……ただの怪しいオッサンだろ。よく付いてきたな…」
そう…言われてみれば、そうかも
そんな…考えなしに
知らない人の家付いてっちゃダメだ
「ふっ…うっ……雪君っ…俺の家のオモチャ見て…俺も全然余裕のないっ…家だったからって……大学生っ…~っ凄くっ…楽しそうにっ……~っ…それっ…俺のせいっ…俺のせいなんだっ…」
「お…お前……」
「なのにっ……真優までっ…居なくなって……雪君っ…1人ぼっち…」
「……そうだな…そうだけど、まずお前……前に言ってた大切な人がその人なんだろ?」
「…っ…そうっ…」
葉山…
酔っ払ってたのに
覚えてくれてたんだ
「はぁ~…じゃあ、まずはお前が、その人の為に思いっきり泣け」
そう言って、葉山が抱き締めてくれた
「…っ…葉山っ…」
「ん?」
「……っ…ほんとにっ…ほんとにっ…大切な人だったんだっ…」
「そうだろうな。俺達もうオッサンなのに、ずっと思ってたんだろ?どんだけだよ?思いっきり泣けよ」
「…~っ…俺がっ……泣くのっ…申し訳ないとっ…思うっ…けどっ…」
「あ?他の奴の事なんか知らねぇよ。俺がいいっつってんだから、俺の前で泣くのはいいだろ」
だって
俺が泣ける立場じゃない
俺のせいで真優も雪君も
きっと…いっぱい泣いてきた
けど…
「…っ…葉山っ……いっぱい…泣いてもっ…い?」
「おお。思いっきり泣け。土日休んだら、目の腫れも引く」
「…~~~っ!…うんっ…ごめっ…ごめんなさいっ……俺っ……」
「うん。言いたい事言っとけ」
「…っ俺…何にもっ…出来なかった……真優にもっ…雪君にもっ……真優っ……死んじゃった……真優っ……うっ…真優っ…~~っ!」
約20年
我慢してきたものを一気に吐き出して
いつ…どうやって寝たんだか
覚えてない
気付くと…
葉山の顔があった
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