葉山side

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葉山side

「白峰さんって、若いよね~」 「ね、アラフォーには見えない。全然いける!」 「え?結婚はしてないみたいだけど、彼女はいるでしょ」 「やっぱいるか~」 「だって、全然飲み会誘っても来ないし」 「え~…一途な感じ?いいなぁ」 こんな会話を何度聞いてきたか… 童顔の同期は、男女問わず優しくて 皆に好かれている なのに 偉ぶらないって言うか 何だろう… その 人生1周終わりましたみたいな 哀愁漂う感じは… 「俺……大切な人達…不幸にしておいて……のうのうと生きてる……最低な奴なんだよね…」 ああ そんな風に思って生きてるからか 見ようによっちゃ まだ新人でもいけるんじゃないかって奴が もちろん俺と同じくオッサンになって 初めて話してくれた 正直、家に行ったのは覚えてるが 後はあんまり… 気付いたら朝で 白峰の家から出勤した ただただ そんなもんずっと抱えて生きてたのかよ なんでずっと傍に居たのに言わねぇんだよ 俺に言ってくれて良かった そう思ってた 友達の飲み会に誘われて飲んだ 結婚してる奴 彼女はいるが結婚はしてない奴 生涯1人を満喫するんだって奴 俺は…別にどうでもいい 兄も姉もいて結婚してるので 末っ子は自由なもんだ 結婚に憧れはあるけど 皆の話を聞いてると面倒な気もするし 彼女は欲しい 恋愛は面倒 面倒なんて、言ってられない位好きな人とか 夢見た事もあったが 現実世界そんな出会いもなく そろそろ1人も気楽になってきた 「次行くぞ~」 「あ…俺、明日子供連れて出掛けるから無理」 「俺も明日は彼女とデートだから退散」 「はあ?嘘だろ?」 「俺も…」 「いや、お前は独り身だろが?」 「独り身をなめるなよ?やらなければやらないゲーム。読まなければならない漫画。やる事は山の様にある」 「……あ…そっ」 なんなの? じゃあ、飲み会しなきゃいいじゃん! 全然飲み足りねぇぞ! 金曜だぞ? 信じらんねぇ! あ… 白峰の奴 絶対家だよな? ちょっとだけ、立ち飲み屋で くそっ 日本酒飲んでやる だいぶ、いい気分 白峰、起きてるかな~? 「しらみね~お前今、何処に居る?!」 「家だよ?…っ…葉山、酔っ払ってるの?」 「いま、飲み会おわったからな~?」 「そうっ…楽しっ…かった?」 「たのし~わけ…あるか!なんで俺…モテね~の~?」 「……っ…っっ…」 あ? なんも喋んねぇ ってか泣いてる? 「ん~?なんだ~?お前泣いてんのか~?」 「…んっ…ごめんっ……また今度っ…話聞くねっ…」 「あ~?いま聞かせろ」 もうお前ん家の前だぞっと 「いっ…今……ちょっとっ…上手く……話せないっ…からっ…」 「うるせ~…もう、お前ん家の前だろ~」 ピンポ~ン ガチャ 「はっ…葉山…なんで…」 「おじゃましま~す」 「え?葉山…」 「お前ん家…おちつく~から~」 普通に泣いてるし そんな時、電話なんて無視すりゃいいのに ドサッと勝手にソファーに寝転ぶ 「おら、言ってみ~?聞いてやるろ~」 「…葉山…」 「おお」 「…俺のっ……俺の子供だった…やっぱり絶対そう…雪君…俺の息子…」 「…あ~?お前の子供~?ああ…彩雪の子供だからな~?雪でいいんじゃね~?」 「雪君のっ……母親っ…~~っ…死んじゃってたっ…」 「あ~?雪君の母親~?」 「真優っ……死んじゃった…うっ……うっうっ…」 白峰 彩雪の子供が雪 雪の母親が死んだ あれ? 死んだ…って… ガバッ 「雪君の母親…お前の…奥さん?」 「…けっ…結婚なんてっ…してないっ…けどっ……」 「死んだの?」 「うっ…今年っ…初めにっ……~っ死んだって…雪君っ…」 え? え? 雪君が教えてくれたの? 「…~っ待て…待て待て待て。どういう状況?その雪君は、お前の事父親だって知って、会いに来てくれたのか?」 「~~っ!違っ…たまたまっ…近所でっ……俺っ…知らなくって……イチゴっ…要らない?って……声掛けてっ……」 は? たまたま近所の確率どんだけよ? 「え?何?お互い親子だって知らないで会ってたの?ってか…近所の子に、イチゴ要らない?って……ただの怪しいオッサンだろ。よく付いてきたな…」 「ふっ…うっ……雪君っ…俺の家のオモチャ見て…俺も全然余裕のないっ…家だったからって……大学生っ…~っ凄くっ…楽しそうにっ……~っ…それっ…俺のせいっ…俺のせいなんだっ…」 つまり… 雪君は白峰を父親だと思ってないから言ってる訳で… 「お…お前……」 「なのにっ……真優までっ…居なくなって……雪君っ…1人ぼっち…」 いや… お前だって…それ… 大切な人なんだろ? 「……そうだな…そうだけど、まずお前……前に言ってた大切な人がその人なんだろ?」 「…っ…そうっ…」 「はぁ~…じゃあ、まずはお前が、その人の為に思いっきり泣け」 高校生って言ってたぞ? どんだけ思ってた人の死を どんな偶然で 子供だって気付いてない子供に知らされてんだよ 白峰を抱き締めてやる 「…っ…葉山っ…」 「ん?」 「……っ…ほんとにっ…ほんとにっ…大切な人だったんだっ…」 「そうだろうな。俺達もうオッサンなのに、ずっと思ってたんだろ?どんだけだよ?思いっきり泣けよ」 「…~っ…俺がっ……泣くのっ…申し訳ないとっ…思うっ…けどっ…」 子供の… そんな話聞いたら分からなくもないけど… 「あ?他の奴の事なんか知らねぇよ。俺がいいっつってんだから、俺の前で泣くのはいいだろ」 「…っ…葉山っ……いっぱい…泣いてもっ…い?」 「おお。思いっきり泣け。土日休んだら、目の腫れも引く」 20年… 1人で頑張ってきた挙げ句 こんな形で死んだとか聞かされて… 「…~~~っ!…うんっ…ごめっ…ごめんなさいっ……俺っ……」 「うん。言いたい事言っとけ」 「…っ俺…何にもっ…出来なかった……真優にもっ…雪君にもっ……真優っ……死んじゃった……真優っ……うっ…真優っ…~~っ!」 子供みたいに泣いて 泣いて泣いて泣いて 溜め込み過ぎなんだよ馬鹿
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