夏希side

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夏希side

ゴクッゴクッゴクッ 「…っはぁ~っ……ヤバかった」 ヤバかった ヤバ過ぎた よく堪えた俺 なんであいつ、全然平気な訳? 一応、俺彼氏なんですけど 一緒に風呂入るって、顔赤くしてた奴が なんで、あんな堂々としてる訳? 「…男らし過ぎた」 …じゃなくて! 傷だよ傷! え? あいつ家で何やってんの? 溺死以外も試してみようとか思ってんの? 雪が…早くバイト行きたがる気持ち 分からなくはない 誰も居ない家に 置いときたくない きっと…雪も分かってるんだ 今度は俺… なんか…俺達今、怪我の運気なの? 絶対パニクったよなぁ でも、こんな怪我わざわざ家族呼ぶまでじゃないし けど1人じゃ帰れないし 何回も言ったから 多分、看護師さんは大した怪我じゃないって、伝えてくれたんだと思う けど、そんなの耳に入らない位になってたんだ よく…ちゃんと病院辿り着けたよな おばさんの時も1人で…行ったんだよな ヴヴ ヴヴ あ、携帯… 何処だ? 鞄どこ置いたっけ? 後から雪持って来て… 確か…右側か ソファーの右に移動しようとして 「…っ!…ってぇ…」 絶対、病院居た時より痛くなってる えっと… 右足と…左手で… この動きに慣れなきゃなぁ… あった… ソファーの陰に… 届け…俺の右手…… 「…いっ!…って…っ…~っ取れた!」 これ… 月曜日には少し良くなってるよね? 雪居なくて生きていける?俺 えっと~? バイトには電話したし ……あっ! 忘れてた! 旭陽さん! 『バイト遅いのかな?』 『疲れてたら明日でもいいよ』 そうだった こんな予定じゃなかったから 『すいません!実は俺、怪我して病院行ってて』 『雪も土日休みなので、月曜日でもいいですか?』 ヴヴ ヴヴ 早っ… 『怪我?怪我って?大丈夫なの?』 『入院してる?ご家族居る?』 あ… 考えなしだった 旭陽さんにとっても… 多分こういう連絡 俺達より敏感だ 『捻挫だけなので大丈夫です』 『2、3日安静にしときます』 ヴヴ ヴヴ 『そっか。無理しないでね』 『ゆっくり休んで』 ずっとイギリスに居るし 雪とも、年に何回かしか会ってないって言ってた 『ありがとうございます』 なのに、凄く雪の事気にかけてくれてる 雪の母さんと…仲良し姉弟だったのかな 「……なんか…知るなって…邪魔された感じ」 目の前の救急箱から湿布を取り出して貼る どう見たって痛そうな傷 全然気にしないで… 先生ですら、痛がらない事に少し驚いてたぞ あんな風に優しく話してくれるなら 雪、病院連れてってみようかなとも思う ま、絶対行かないって言うし バイトで埋め尽くされる日々に、戻るんだろうけど わざわざ見えないとこに傷つけてた 傷つけてる最中に カッター放り出して病院行ったんだ だから…分かった もし、自分で絆創膏とか…止血してたら 全然そんな事してたって気付かなかった 死にはしない バレない程度の傷 毎日…鏡見る度に 知りもしない父親と向き合って… 月曜日…ちゃんと聞こう 白峰さんだったら 次の日白峰さんの家行って 話してみよう それから…白峰さんの話聞いて 白峰さんがどう思ってるのか… 雪と…向き合う気あるのか どんなに優しくて、いい人でも 雪の辛さ分かってくれなかったり これから、雪の為に出来る事する気持ちないなら 雪には言わない 言わせない またバイトと学校で忙しくなるし 少しずつでも、楽しい事増やして 「…っ……なんでっ…っ…なんでっ…」 せめて… 最初からじゃなくても 今まで何もしてこなくても これからは… 雪の事考えてくれる 優しい優しい父親下さい 雪… いい奴なんです 「…っ…うっ…」 寂しいのに おばさんの事思って おばさんの為に笑える 優しい子なんです 「~っ…っ…うっ…」 これからだけでいいんです 最高じゃなくていいから 普通の父親 雪に下さい 「夏の父さんって、夏に似てるね?」 「そうかなぁ?たまに言われるけど、自分では分かんないな。ってか、俺が父さんに似たんだけどな」 「そっか。自分じゃ分かんないもんだね?」 「兄弟とかも、そうじゃね?」 「そうかもね。父さんと、話したり、どっか行ったりするの?」 「この歳になったら、親となんて、そんなに話さないし、あんま出掛けたりもしないよ」 「そうなんだ。母さんと話すのと同じ感じ?」 「え?改めて聞かれると…ちょっと違うかな。母さんは、しょっちゅう居てやかましいけど、父さんは居る時間限られるし、話すのも、必要な時って言うか…」 「……そっか」 あ…雪の母さんは しょっちゅう居ないんだった もう…居ないけど ようやく見つけ出したと思ったら その…何にも映ってないみたいな目…何? 笑ってるのに笑ってない 笑わなくていいとこでも笑ってる まるで この前までの雪も おばさんと一緒に居なくなってしまったみたいだ ずっと… 仮面被ったまま 見えない奥の方で泣いてるみたいだ 元の雪返して おばさん、雪連れてかないで 雪まだ… 生きてかなきゃなんないから 生きてて良かったって 思わせたいから
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