雪side

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雪side

「雪の名前はね、お父さんの名前から貰ったのよ?」 「お父さん?」 「一緒には居られないけどね。凄く凄く優しい人なの」 「お母さんに優しくしてくれるの?」 「すっごく優しくしてくれる!」 「じゃあ、連れて来る!」 「…ありがとう。でも、連れては来れないの」 「なんで?」 なんで… 母さんに優しくしてくれるなら どんなに遠いとこからでも連れて来るよ 夢… 朝か 夏の匂い… あ…そうだった 夏居たんだ 見上げると 「おはよ」 え? 「夏…起きてたの?」 「うん」 え? 「なんで、このままなの?」 「なんでって…1人じゃ動けないし、動けないなら、雪抱き締めたままがいいだろ?」 「なっ…!」 なんで起きてすぐ そんなセリフ言える訳?? …って、そっか 「夏、トイレ行く?」 「うっ…なんか…介護されてるじーさんみたいな気持ち…」 「手見せて」 「はい」 「腫れは…あんまり変わんないね。少し熱い。あ…だから夏、少し熱あったのか。どれ?」 「熱は大丈夫だよ」 「やっぱ少し熱いかも。ちょっと足見せて」 足もチェック 「う~ん…足も腫れは変わんないけど、変な色出てきてる。夏、今日はずっとベッドだよ?」 「雪もなるべく居てくれる?」 「俺は掃除も洗濯も…やる事あるだろ?」 「………」 ん? 「夏?痛くなってきた?」 「……うん」 「あ…ちょっと待ってて!」 痛いなら痛いって言ってよ 病院でくれたの… 痛み止めと…水… あ、湿布も貼り替えなきゃ… 「夏、痛み止め持って来たよ」 「ありがと」 「凄く痛いの?まあまあ?」 「……結構」 結構… じゃ、昨日はもっと痛かったのかな 寝る前に薬飲ませとけば良かった 「夏…眠れた?」 「ゴクン…眠れたよ?」 「湿布貼り替えよ?」 「雪がやってくれんの?」 「うん。夏は、極力動かないで」 手首の湿布、あったかくなってる 湿布だけじゃなくて なんか冷やした方が気持ちいいのかな ちゅっ え? 夏が髪にキスしてきた 「…何?」 「一生懸命湿布替えてくれる雪が可愛いくて」 「は?痛いんだろ?」 「手と足はね」 熱上がってる? 頭おかしいんじゃないの? 足の湿布を剥がす 「っ!」 「あ…ごめん。痛かった?」 「できれば…優しくお願いします」 「ゆっくり?」 「そうそう」 手より熱い 足だけでも、後で冷やそ 冷やすの買って来よ 「はぁ~っ…気持ちいい~」 「後で、冷やすの買って来るね」 「え?いいよ」 「良くないよ。湿布熱くなってるもん」 「だんだん良くなるよ」 「……俺は…基本痛くないから、ほんとはどうして欲しいのか分かんない。ちゃんと教えて」 湿布を貼って夏をじっと見ると 起き上がって 「雪」 へ? 「なんで腕広げてんの?」 「雪がここに入って来れる様に」 「馬鹿な事言ってないで、トイレとか洗面とか行くよ」 「まだ痛い」 「あ…そうだよね。朝ごはん作って来る。夏は動かないで」 「やだ」 は? 「やだって何が?」 「早く、来て」 「……熱、計ろうな」 「雪…」 なんでそんな泣きそうな顔してんの? 「はいはい。夏季君、どうしたんですか~?」 夏の腕の中に入って、背中をポンポンする 熱高くなさそうだけど、なんで変なの? 「あと10分このまま」 「はあ?お前ほんと、どうした?」 「ちょっと……甘えたくなった」 「……明日、病院行こうな。頭検査してもらおう」 「冷たい……」 ポンポン 甘えたく…なる こういう時甘えたくなる気持ちが 俺には分からない だから 夏に寄り添えない なんて言葉をかけてあげたらいいのか 分からない 「何て言って欲しい?」 「別に…何も…」 「…ふ~ん?」 具合悪い時は 何で具合悪いのか考えて 母さんが帰って来るまでには 何とか少しでも回復させる事ばかり考えてた 少しでも心配させる様な事… 減らしたかったから 無意識に 具合悪いとか痛いとか 隠すの上手くなってって そのうち、ほんとに鈍感になったのかな ほんとに小さい頃は甘えてたっけ? 「雪…沢山汗かいたね?えらい、えらい」 あ... 違う小6の時 俺、インフルエンザで寝込んで 母さん仕事休んで… 俺のせいで休んで また母さん いっぱい働かなきゃなくなるって どうしようって気持ちと いつもは居ない時間に 母さんがずっと居てくれて嬉しい気持ちと… 「夏、痛いのに頑張って偉いね」 「え?」 「えらい、えらい」 夏の頭を撫でると 抵抗しないし、文句言わない そして、肩に顔を埋めてくる ほんとに甘えてる… 中学に入る少し前だったから 制服とか…教科書とか… 買わなきゃなんなくて 俺の為に休んだ2日間のせいで しばらく母さんの休みの日はなくなった あれから… 熱なんて出さない様に 出たら、すぐ解熱剤飲んで 母さんが休んで もっと忙しくなんない様に… 「雪…ありがとう」 「家では、おばさんにこうしてもらってたの?」 「はっ?この歳で、んな訳ないだろ?」 「じゃあ、彼女?」 「別に…誰も居なきゃ居ないでいいけど…甘えられる人が居ると、甘えたくなるだろ?」 「ああ……そういう事か」 居るからか 居なきゃ、そうも思わないよな 「じゃ、俺買い物行って来る。買って来て欲しい物とか、今のうちにして欲しい事は?」 「イチゴ…まだあるだろ?冷蔵庫から持って来て欲しい」 出たよイチゴ星人 冷蔵庫からイチゴを取り出す 「夏…このイチゴなくなったら、生きていける?」 「このイチゴは、俺の人生の中のたった数日の出来事だろが。それまでイチゴ食わないで、生きてこれたわ」 「白峰さんの実家にお願いしたら?毎月送って下さいって」 「……白峰さんの実家…何処なんだろな?」 「さあ?んじゃ、行って来るね」 白峰さん… そう言えば、なんか俺の名前に似てなかったっけ? 「お前に似すぎてて、びっくりしたわ!」 なんて言ってたっけ… いや… そんな事あり得ないけど
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