夏希side

2/6
前へ
/43ページ
次へ
「夏のバカ」 しばらくして起き上がった雪がふて腐れてる 「起こしてやったんだろか」 「他の起こし方あるだろが」 「普通に起こしても、なかなか起きないじゃん」 「大声出せばいいだろ。バカ!…バ~カ!」 そう言ってベッドから下りて行く え? 雪起きるの待ってたのに 俺、このまま寝かされてんの? ……痛み…だいぶいい そろそろ1人で歩けるかも… そっと床に足を付けてみる 痛いけど、これ位なら歩けるかも 右足に力を入れて立ってみる いけんじゃね? 左足を1歩前に出して 右足を前に出そうと、左足に体重をかけると 「いっ!?」 痛い! けど…なんとか歩けそう 「何やってんの?!」 ビクッ 「え?」 雪が凄い剣幕でこっちに来る 「安静にしてろって言ってんのに、なんで1人で歩いてんの?!」 「いや…なんかそろそろ歩けそうだったから……ってか、そんな怒んなくてもいいじゃん」 なんか、母さんに怒られてるみたいで怖いんですけど 「せっかく良くなってきたのに、また腫れて痛くなるだろが!何?!トイレ?!」 「別に…雪がそっち行ったから、俺も行こうかと…」 「お前は、産まれたての雛鳥かなんかか?付いて来たいなら口で言え!」 「だから!そんな怒んなくてもいいだろが!」 雪…別の服… 着替えてきてくれたんだ 「…怒ってない…呆れてるだけ」 「ごめん…呆れないで」 「あっ!!」 「何?」 「夏…椅子に座って!」 「…?」 俺の机の椅子に座らせられ 「何?」 「足上げてて」 そう言うと、椅子を動かし始めた 「おお!…なるほど」 「早く気付けば良かった」 キャスターが5個も付いてる椅子は 余裕で俺を運んでくれる 「夏は、しばらくこれで移動」 「ほんと、早く気付けば良かった」 「じゃ、後は好きにして。俺はご飯支度する」 「お前な~…恋人が怪我してんだぞ?もうちょっと、優しく言えない訳?」 「恋人って…夏だろが。大人しくしててよ」 こいつムカつくな! 夏だって、恋人は恋人だろが! 絶対彼女に、こんな扱いしてなかったろ! リビングに俺を置いて さっさと台所へと行ってしまったので 椅子に乗って台所へ行く 「………見てていい?」 「やだ」 「おい!」 「人に見られながらなんて、気が散る」 「手伝うからさ」 「手伝わなくていいから、あんま見ないで」 そう言いながら、食材を出して 玉ねぎの皮を剥いていく 「見ないでってば」 「じゃあ、皮くらい剥かせてよ」 「……夏」 「何?」 「皮を剥くのはどこ?」 「どこ?玉ねぎの外側」 「剥かれる側じゃない!剥く側!」 「はあ?手で剥くだろが」 「その手をよく見ろ」 自分なんて血流したまま病院来たくせに… 「皮剥いた位でどうにかなるかよ」 「っそ。でも、もう剥く作業は終わり。夏に出来る事ない。向こう行ってて」 トン トン トン トントントントントントン トントントントントントン 「雪、早~い」 「見ないでってば。流血するよ?」 「……なんだよ…冷たい彼氏だな」 雪が料理してる姿は貴重なんだぞ? でも、これ以上傷つけられたら困る トイレ行って来よ トイレに向かうと 「えっ?夏トイレなの?ちょっと、言ってよ!」 慌てて雪が追いかけてくる 「もうだいぶ痛み大丈夫だから。この位平気。風呂も自分で入れるかも」 「風呂は絶対ダメ!濡れてんだよ?転んだらどうすんの?」 「はいはい。分かったから…っと…ってて…」 「肩貸す?」 「大丈夫。雪、戻っていいよ」 「……うん…必要な時呼んでよね?」 「分かった」 でも、絶対今日は1人で風呂入ろう なんで、あいつ普通に一緒に入ろうとする訳? キス以上しないとか言っといて 反応しちゃったら俺 恥ずかし過ぎて泣いちゃうからね? うん、うん あんまり痛くない、体重のかけ方分かってきたぞ? 「……っと…ふぅ」 トイレから出て椅子に座ると 「夏~…大丈夫?」 「大丈夫~」 台所の方に行くと ジュージューと音がしている いい匂い ダイニングテーブルの椅子の背もたれに、腕を組んで顔を乗せて雪を見る 白峰さんだろうと、そうじゃなかろうと ちゃんと優しい父親見付かったら 父親と暮らすのかな あ、でも… 向こうが独り身とは限らないか 白峰さんだって、家族居るかどうか分かんないし 男の1人暮らしは、単身赴任のせいかもしれないし だったら…迷惑なのかな… 別に…その家族が悪い訳じゃないけど 家族…居て欲しくないな 「旨かった!…このハヤシライス、すげぇ旨い!」 「ここのトマト缶が1番美味しいんだよね」 「へぇ~…雪の好きな食べ物って何?」 「何?突然…」 「あんまり、これが好き!とか聞かないから」 「1番好きなのは…」 「うん」 「母さんが作ってくれるハンバーグ」 「……へぇ?普通のと違うの?」 作ってくれる… 現在進行形… 「ふわふわしてる。色々焼き方とか、焼き時間とか変えても、母さんのみたいにはならない。味も…なんか違う」 雪の中ではまだ… そこに居たり…するのかな… 「ふ~ん?おばさんに聞いてみなかったの?」 「教えてくれないんだ。ハンバーグの時だけは、秘密~って、俺にも手伝わせないで、楽しそうに笑ってて…」 「そうなんだ。雪も料理出来ちゃうから、おばさんだけが喜ばせてあげられるの、嬉しかったんじゃない?」 「うん…嬉しそうだった」 覚えておこう 色んな事で、頭ん中いっぱいの雪が 思い出せなくて悲しくなった時に 1つでもおばさんの思い出 話してあげられるように
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加