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夏希side
憂鬱だ
今までも、雪を1人置いてくのは心配だったけど
心配…もあるけど…
「はぁ~…早く夜になんないかなぁ…」
バイト…やめようかなぁ
いや…雪がバイトし始めたら意味ない
ってか…母さんより雪に怒られそう
あいつらの事絶対許せないのに
あいつらのせいで雪が大学もバイトも休みで
その時間を嬉しいと思う自分が情けない
雪の傷は…全部治ってないのに
「よし、行くか」
ガチャと部屋のドアを開けると
ソファーの背もたれの上から、こっちを見てた雪が、ガバッと前を向いた
一瞬…しか見えなかったけど
泣いてた?
ソファーの後ろまで行くと
何を見るでもなく
適当にスマホをスクロールしてる
泣いてはいないか
「雪、行って来るね」
「行ってら~」
置いてかれる事も
待ってる事も
苦手なんだ
どんどん雪の気持ち分かってく
だからって、ずっと一緒に居れる訳ないし
「夏?どうかし…ふぁっ……んっ...!」
チュッ
振り向いた雪にキスをする
「ちゃんと帰って来るから。行って来ます」
突然キスされたのに
困った様な、嬉しい様な顔で顔を逸らした
文句も言わないなんて
雪であって雪じゃない
雪が変わってくのは嬉しい
死にたがってる雪が…
もっと変わってくれたら嬉しい
電車に乗って考える
「さあ?数えてないもん。俺の背の高さがいいのか、何なのか。でも大抵は、目が合ったり、向き変えたり、手後ろに回すと、やめるもんなんだよ」
バカ雪
俺の耳じゃなく
自分のケツに防犯ブザー付けとけよ!
どんだけの男に…男?だよな?
ケツ触られてんだよ!
って…
え?
別のとこも触られてたりする?
いやいや
普通ケツからだろ
え?
まさか、いきなり前から触る?
ってか…
服の上だよな?
まさか…服の中とか……
「な~つ~き~」
え?
振り返ると空閑が居た
「どしたの?鳩豆鉄砲みたいな顔して」
「……空閑...え?大学だ…」
「そうだね」
いつの間に大学まで歩いてたんだ
無意識…怖っ…
でも、凄っ…
「昨日の雪、可愛かったなぁ~。あ~早く帰って雪のこふぉっ…」
訳の分からない事を、ボリュームも下げずに言い出した空閑の口を手で塞ぐ
「お前は…訳分かんない事喋んな。あと…昨日は色々ありがと」
パッと手を離すと
じ~っと見てくる
「何?」
「ふ~ん?なかなか強い理性をお持ちのようで」
「は?」
「夏希はともかく、よく雪ちゃん夏希の事、襲わなかったな?」
「なっ…!ちゃん付けヤメロ!気持ち悪い!」
「え~?だって夏希の彼女だろ?」
「彼女じゃねぇよ!」
「雪ちゃん…ツンデレで可愛いよなぁ…色白でキスマークも目立つし…」
は?
「なっ…何でお前がそんな事…知ってんだよ!!」
だって、あの時会っただけじゃないのか?
俺が知らない間に…え?
いやいや...そんな訳ない…
「…ぶはっ!…ははははっ!…お前っ…その顔っ…ははははっ…」
「笑い事じゃない!何でお前が、そんな事知ってんだって聞いてんだよ!」
「ひ~っははははっ…くるしっ…くるしっ…」
「おい!空閑…」
「何やってんの?お前ら」
桜井…
「…別に」
「さっ…さくらっ…くくくっ…くるしっ…」
「いや...別にって、笑い死にしそうな奴が1匹居るけど?」
「…笑い死ね」
「…どうした?柊崎」
「何が?」
「泣きそうな顔してんぞ」
「は?」
「やめっ…さくらっ…くくくっ…くるしっ…」
この馬鹿が
馬鹿だけど、そんな事するなんて
そんな訳ない
けど…
じゃあ何でって…
雪の顔で…体で…
想像したのかって考えると…
「ムカつく!」
「ほら、柊崎怒ってんぞ?さっさと謝れよ」
「ひ~っ…無理っ…ほんとっ…」
「よし、こいつは置いて行こう、柊崎」
「夏希~」
「………」
「夏希く~ん?」
「………」
「うわぁ…柊崎が、ここまで怒る事ないぞ?お前、何したんだよ?」
「ちょっと夏希の彼女で想像した事言っただけ…」
「はあ??人の彼女で何想像してんだよ?そりゃ怒るわ!」
だろ?桜井
気持ち分かるよな?
だって誰にもそんなの見せたくないのに
勝手に想像されたんだぞ?
「ほら!柊崎また泣きそうになってるじゃん!さっさと謝れよ!」
「はいはい。ちょっと想像より可愛いかったので、勝手にあれこれ想像してしまいました。どうもすいませんでした」
「んなっ…!」
こいつ!
「空閑!それはっ…謝罪じゃない!」
「あ、でも、彼女だけじゃなくて、夏希込みだから安心して」
「「……はあ?」」
夏希…込み
俺…込み
俺含めて想像してたって事?!
「なっ…!はあ?…おまっ…」
「げぇ~…空閑…友達がヤってるとこ想像して楽しいの?」
「すげぇ楽しい♪︎だって夏希、優しいヘタレだからさ…」
「お前の勝手な想像を、ほんとにあったみたいに言うな!」
なんか…
当たらずとも遠からずに聞こえる
雪に言われてる事をまとめると…
そんな様な…
怖い怖い
何なのこいつ!
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