夏希side

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雪から体を離して、雪の左腕の傷を触る 「痛くないよ」 「痛そうにしか見えない」 「俺が痛くないのに、夏が痛そうな顔してどうすんの?」 「……もしもさ…父親が見付かって…」 「え?」 「しかも、すげぇいい人だったとしたら…もう、こういう事しなくなる?」 「………さあ?すげぇいい人でも、罪は変わんないからね」 罪は…… 「そっか…」 「だから、もし父さん見付かったら、すげぇいい人殺す犯罪者になるかもな?俺」 「……そっか」 「そっかじゃない。そこは普通止めるだろが。でもまあ…その前には夏から離れてあげるから、心配しないで」 「…心配してない。一緒には殺してあげれない。けど…雪の傍から離れるつもりはない」 雪の顔を真っ直ぐ見ると 「……何マジんなってんの?バカじゃないの?」 「マジで言ってんの。雪が父親殺したって、俺は雪の傍に居るから、俺遺して行くなよ?」 「……だから、冗談だし、誰かを殺して犯罪者より、自分が消えた方が早いって」 「だから、その時は俺も連れてけって」 「なんで夏が巻き込まれなきゃなんないんだよ。夏は関係ない」 そう言って、雪が俺から離れて歩き出す 関係ない… どれだけ一緒に居ても どんなに気持ち伝えても その時が来たら 俺は簡単に置いてかれるんだ さっさと歯みがきを済ませて、俺が食べたイチゴの器を洗って、寝る準備をしている 明日からまた、ほとんど雪に会えないのに こんなまま寝るつもり? 「歯みがきした?電気消すから、部屋入って」 冷たくない? 「夏…椅子押してこうか?」 寂しくないの? 「……大丈夫…おやすみ」 「おやすみ」 ドサッ ベッドに横になって、さっさと電気を消す 分かってるけど 俺を巻き込みたくないって それは雪の優しさなんだって分かってるけど 優しくしてたら生きられないから、必死に隠してるのに やっぱり優しい雪を困らせてるって 分かってるけど 会ってみたいと思う父親に会うのに 殺すか、自分が死ぬかって考える雪を 誰か…何とかして 「あ…スマホ」 何処置いてたっけ? 机の上か? 「…っと~?」 立ち上がって、机の上を手で探る もっと、そっちか? もう少し前に出た瞬間 「わっ!」 いつもは、あるはずのない位置にあった椅子の足に、思いっきりつまずき その上、咄嗟に机ではなく、一緒に倒れ始めた椅子の背もたれを掴んでしまい 俺は椅子と共に心中した 「~ ~!」 なんか…うるせぇな もう朝? 「…~!…~!~~てば!!」 雪か なんか…泣きそうな声… すげぇ眠いけど 頑張って、うっすら目を開ける 「夏!!夏分かる?!分かるの?!返事してよ!」 何言ってんの?こいつ なんで泣きそうなんだよ 「……泣くな…」 「ねぇ!ちゃんと起きてってば!夏!」 うるさい 眠いのに 「……眠い」 「俺の事分かる?!ちゃんと答えて!」 ああ… 何で寝転がって、雪に抱き上げられてんのかと思ったら 転んだんだった 物音で雪、気付いたのか? それとも、もう朝? 倒れそうになってたとこから目覚めるまで 意識失ってた? 考えたいけど…ぼーっとする 「夏!俺の事…分かんないの?!」 「……分かる…雪…」 「ちゃんと、こっち見て!」 泣くなって言ったのに… 雪の涙を指で拭う 「夏!分かるの?分かってるの?」 「…雪だって」 「夏が!…死んだら俺っ…もう全部終わりだからっ…」 「…終わり?」 「夏が死んだら…もう…お金返すとか…どうでもいい…夏んとこ行く…」 俺が死んだら終わり 俺んとこ…来る… 死んだ俺んとこ… 「…いや!ダメだろ!」 一気に目が覚める 「~~~~っ!夏っ…夏~~っ」 雪が泣きながら抱き締めてくる 「ごめん。心配かけた」 「~~っ…夏のバカっ……怪我してんのにっ…何で電気も点けないで動いてんの?」 「あ~~...そうだった。スマホ取ろうとして…悪い。びっくりさせたな?物音に気付いて来たのか?」 「~っ!凄い音したっ!夏っ…声掛けてもっ…電気点けてもっ…体起こしてもっ……~っ!ぐったりしてっ…」 うわ… やったな俺 「ごめん…ごめん雪」 雪を抱き締める 「すぐ目覚めなくてごめん。何秒位気失ってた?」 「うっ…さんぜんっ…」 「3000?!」 「ろっぴゃく秒…位っ…」 「マジで?!俺、1時間気失ってたの?!」 「…っ…にっ……感じたっ…」 「は??」 感じた? 「…多分…何分か……だと思う」 「なっ…なんだよ!びっくりさせんなよ!俺、今すぐ病院行かなきゃなんないかと思ったわ!」 「…うっ…っく……夏がっ…全然目覚めなかったのはっ……少しの間でもっ…~っ死んだみたいになってたのはっ…ほんとだもっ…」 「…あ~…ごめん…うん。そういうのって…長く感じるよな?ごめん、雪」 「許さなっ…俺置いてっ…~っ置いてくのっ…許さないっ…」 「うん。俺も…そう思ってるよ。だから分かる。ほんとに、ごめん…ごめん」 ほんと自分勝手 自分は死ぬ事… 俺を置いてく事ばっか考えてるくせに けど…だから… 今の雪の気持ちが分かる 「夏っ…やっぱり一緒に寝る」 「もう朝まで大人しく寝てるから、ちゃんと自分の部屋で休め」 「やだっ!…やだっ!…俺の知らない間にっ…」 「ふっ…一緒に寝たって雪、熟睡じゃん?」 「でもっ…やだっ…」 「…分かった。一緒に寝よ?」 「ん…」 自分勝手なツンデレ姫が安心出来る様に せめて寝るまで安心出来る様に 雪と一緒にベッドに横になる
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