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「この時間なのに、凄い人!」
「まあ、さっきのイベントの後、飲んで帰る人とか、この時間なのかもな」
「なるほど。侮ってた」
「天海、途中まで同じだろ?」
「うん」
今は朝ですか?
って位凄い
「天海…大丈夫?」
「大丈夫。美月は?」
「なんとか…」
美月の姿は見えるものの…近づけない
うわっ!
降りてく人達で、ぎゅうぎゅう押される
けど…
「ただいま、美月」
「ようやく再会出来たな」
再会は出来たけど、今度は乗ってくる人達で、ぎゅうぎゅう押される
「なんで?もう…イベント関係ない場所じゃん?」
「何処で飲むかは自由だろ」
なるほど…
電車が動き出すと…
ん?
これは…
まあ、酒飲んで、こんだけ満員電車なら、ついって気持ちにもなるか
後ろに手を回すと…
手を掴まれた!
は?!
何こいつ!
少し体の向きを変えて、顔を見ると
目が合ったのに、笑っている
笑いながら俺の後ろから、押し付けてきた
くそっ!
こっちは、久しぶりに働いてクタクタなんだぞ!
そう思った時
「怪我…良くなったんだ…」
ぞくっ…
俺の耳元で、そいつが囁いた
怪我…良くなった
つまり…怪我が酷かった時を知ってるって事で
こんな事をするって
あん時の奴らの1人だ
今すぐ殴ってやりたい!
逆の手で、何とか、そいつの手を振り払おうとするけど…
馬鹿力!くそっ!
いい様に擦り付けやがって…
「おい、いい加減にしろよ」
「ん?天海…何か言った?」
前に居る美月がこっちを見る
「お友達に知られてもいいのか?」
そいつが耳元で話してくる
馬鹿かこいつ
あの時、死にたいった言ったろ
こんなん知られて困る事なんてない
無くして困るものなんて…
夏くらいだ
って…Tシャツの中に手入れたきた!
そいつの手を掴んで
叫ぼうとして気付く
あれ?
俺…くすぐったくない
何で?
「おい!その子から、手を離せ!」
え?
一斉に振り返ると、少し離れたとこで白峰さんが、こっちに向かって指差している
え?
何で白峰さんが、ここに…?
まあ…普通に仕事帰りか
パッと手を離して、後ろの奴が俺から離れたが
「うわっ…モロに手突っ込んでたぞ」
「キモッ」
「男だぞ?」
あちこちからヒソヒソと聞こえてくる
「天海!…大丈夫か?!」
「大丈夫」
「おい!お前!分かってんだろな?次の駅で降りたら警察行くぞ」
「……」
美月の言葉に、男が、顔を伏せて無視する
「何、関係ないフリしてんだよ?!皆が見てんだからな?」
「そうだぞ!その子に謝れ!」
白峰さんまで加勢すると
「男でも痴漢行為は違法」
「犯罪者は謝罪しろ」
「無視すんな~犯罪者」
周りも加勢していく
なんか…雰囲気ヤバいな
そいつの顔を撮影する奴まで出始めた時
電車が駅に止まった
「よし、逃げんなよ?」
美月が、そいつの腕を掴んだのと、ドアが開くのが、ほぼ同時で…
ドアが開いた瞬間
ドンッ
「うわっ!」
「美月!」
美月が、そいつに押されて倒れた
「美月!大丈夫?!」
「大丈夫…あいつは?!」
「知らない!どうでもいい!怪我は?立てる?」
「どうでも良くないだろ。誰か…捕まえて…」
美月が周りを見渡す
「一瞬の事で…」
「悪い」
皆、まさかそんな行動に出るとは思わず
そいつを捕まえられなかったらしい
「天海、降りよう!」
「え?!」
美月が、腕を引っ張って、俺を降ろした
「美月、いいってば」
「良くない!まだ、その辺に居るかもしれないだろ?探そう!」
「それより、ほんとに大丈夫?足挫いたりしてない?」
「俺は大丈夫だから、お前の事考えろ!」
そんなに一生懸命になってもらう事じゃないのに
そんなに一生懸命になってもらえる人間じゃないのに
「その辺…探そう?」
「うん…」
どうでもいい
そんな風に考える俺は、だいぶおかしいんだろう…
結局、その辺探しても見付からなくて…
「くっそ~!もっと、しっかり掴んどくんだった!」
「美月のせいじゃないよ」
そう話してると…
「雪君!」
え…?
「白峰さん!」
「はぁっ…はぁっ…ごめんっ……すぐに、追いかけたんだけどっ…っはぁっ…おじさんの足じゃっ…役立たずだったっ…」
すっごく、はぁはぁ言って苦しそう
「白峰さん、あいつ追いかけてたんですか?!」
「うん…せっかくすぐにっ…はぁっ…追いかけたんだけどねっ…ダメだね?年寄りは…」
「いいえ…すいません!そこまでしてもらって…白峰さんのお陰で、あいつ社会的制裁受けただろうし、充分です。ありがとうございました」
「天海…親戚の叔父さん?」
あ…忘れてた
「違うよ。同じマンションの同じ階の、ご近所さんで、白峰さん」
「…ご近所さん?」
「どうも、初めまして。白峰です」
「……あ、初めまして。天海の大学の友達で、美月です」
「雪君、一応警察行こ?見付からないかもしれないけど、特徴とか言っておけば、防犯カメラとかから…」
やっぱり、皆にとっては大事なんだな
「そこまでしなくて大丈夫です」
「え?」
「少し触られただけなので…」
「いや…でも…」
「終電…行っちゃいましたね。すいません」
「俺も、警察行くべきだと思うけど…行ったら…天海がされた事、話さなきゃなんないだろうし…天海が嫌なら…仕方ないかな」
「うん。ありがと」
そういう理由じゃないけど
「あっ…そっか…そうだよね?ごめんね?雪君の気持ちも考えないで…そうだよね?ほんとは、皆にバレるのだって嫌だったよね?俺…パニくっちゃって…テンパっちゃって…ごめんね?」
「いえ…あいつには、借りもあるんで、助かりました」
「借り?」
「天海、知り合いだったのか?」
「知り合いってか、これの原因?」
左頬を指差す
「は?!」
「え?!」
仕返しなんて絶対無理だろなと思ってたら
まさか、こんな形で出来るとは…
罰って、ちゃんと当たるもんだな
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