雪side

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「くそっ!それの原因なら、尚更捕まえたかったのに!」 「ごめんね…雪君」 「え?いや…もう会う事すら無理だと思ってたんで、あんな仕返し出来て満足です」 「そんなんで満足すんな!ってか…は?そんだけ怪我させといて、無罪放免って事か?」 「だって、俺酔っ払ってたし、顔よく覚えてないし…あいつが、怪我良くなったんだ…って話し掛けてこなきゃ、さっきだって分かんなかった」 ほんと馬鹿な奴だ わざわざご丁寧に挨拶して あいつら皆、馬鹿だったもんな 「はあ?何あいつ、そんな事言って来たの?!ムカつくな!ってか、天海酒飲んだの?!」 「雪君、お酒は…20歳になってから…って、その人の事何か知らないの?」 「まあ、騙されて飲んだんですけど、ほんとに…酔っ払ってる時、連れてかれたんで…記憶が曖昧で…なんなら、さっき顔見ても分かんなかった位です」 「連れてかれたってお前…それで…夏が見付けた時、死んでると思った状態にされたのか?」 「えっ?!」 これは… 2人共引いてる… 「えっと…とりあえず見た目が派手だっただけで、たいした怪我じゃなかったし、この通りもう元気だし…この話はここまでという事で。美月、白峰さん。ご迷惑おかけしました。ありがとうございました」 「いや…」 「雪君…」 可哀想って思われてんのかな 俺の事で、俺はどうでもいいのに こうやって、気持ち向けられると どうしたらいいのか分からない 「天海…お前さ、もう少し自分の事大切にしないと、夏泣くぞ?」 「うん。だから、よく泣いてる。俺、人の気持ちに寄り添えないから」 「~~っ…ごめんね」 「え?白峰さんは関係ないです」 「っ多分…関係…あると思う」 「え?いえ…全然関係ないです」 「~~っそうだよね…ごめん」 白峰さんが、こんなに一生懸命になってくれるのも 謝ってくれるのも よく分からない 「とりあえず、帰ろっか。おじさんがタクシー代出してあげるね」 「終電行っちゃったかぁ」 「ごめん、美月」 「いや…白峰さん、自分の分は出すので大丈夫です」 「いやいや、俺お金持ちじゃないけど、社会人だからね…あっ!怪しい?初めて会ったのに、そこまでしたら怪しいのかな?」 「いえ…ありがたいですけど……じゃあ、お言葉に甘えて」 そうして3人でタクシーに乗ると 「天海って…白峰さんとよく似てるね?」 と、美月が唐突に言ってきた 「えっ?!」 「え?そう?」 夏にも言われた そんな似てるかな でも、前の席で白峰さんも驚いてる 「絶対親戚だと思った」 「夏も、兄ちゃんかと思ったって言ってた」 「だろ?親戚辿ってけば、どっかで繋がってるかもな?」 「かもな」 旭陽さんに雰囲気似てるし、母さんの方の親戚関係かもな 「両親なら、どっちに似てるんだ?」 「…父さんらしいよ…会った事ないけど」 「え?あ…悪い」 「全然?別に珍しい事でもないだろ」 「まあな」 「…どうして……」 え? 黙って聞いてた白峰さんが喋り出した 「どうして…父親似だって分かったの?」 「母さんが…よく、俺に似て可愛いんだって言ってました」 ばあちゃんも…違う意味で言ってたけど 「へぇ~?自分の息子に向かって、それ言うなんて、可愛い母ちゃんだな?」 「うん。優しくて、面白い母さんだったよ」 「あ…そっか…亡くなったんだもんな?ごめん」 「~~っちょっと兄ちゃん…おじさん、涙で前見えなくなっちゃうからっ…」 「え?…すいません」 タクシーの運転手さんが、ヤバい事言ってる 「ごめん天海…さっきから俺…余計な事ばっか聞いて…」 「別に?知らなかったら聞くだろ。あ、運転手さん、そこの角左に曲がって下さい」 「あいよ。兄ちゃん…人には恵まれてるみたいだから、絶望しちゃダメだよ?」 「はあ…ありがとうございます」 絶望…ってか ある意味毎日死ぬという目標に向かって、頑張ってますとか言ったら 運転続行不可能だな 「えっと…これ位で足りるかな?」 「こんなにいいです」 「いや、夜だし足りないかもだけど…じゃあ、運転手さんお願いします」 「兄ちゃん、頑張れよ!」 「はあ…ありがとうございます。美月、ありがとな」 「おお。またな」 美月を乗せて ちょっと人情に厚い運転手さんのタクシーは、去って行った 「白峰さん、すっかり巻き込んじゃって、すいません」 「……いや…雪君、大丈夫?知らない男に触られるなんて、気持ち悪かったでしょ?」 「ああ…たまにあるんで。服の中にまで入れられたのは、初めてでしたけど」 「えっ?!たまにあるの?!」 エレベーターホールに白峰さんの声が響く 「白峰さん…声…」 「あっ…ごめん…なんで?!って…雪君に聞いても分かんないよね……」 「そうですね?あ、エレベーター来ました」 エレベーターに乗り込む時 「…どうしよう…」 白峰さんの…そんな小さな呟きが聞こえた 俺の事? 自分の事? チン エレベーターから降りて、歩き出すと 「雪君…こんな時間までのバイト、よくあるの?」 「その日のバイトによりますけど…結構遅い事はあります」 「…そう……その…遅い時間だと…酔っ払ってる人とか…結構居るから……心配だな…」 たまたま知り合った近所の子なのに… 優し過ぎて、大丈夫かな? 生きてくの大変そう… 「大丈夫です。今日も白峰さんが声掛けてくれなかったら、大声で叫んでやろうと思ってたとこだったんで」 「……そっか。でも…叫べなかったら、知らない人でも、その辺の人に助け求めるんだよ?」 「うん…あ、はい」 ヤバ… なんか話し方につられて、うんって言っちゃった 「……それじゃ、ゆっくり休んでね。おやすみなさい」 「ありがとうございました。おやすみなさい」 そう言って、白峰さんは、心配そうな顔で去って行った 疲れた… 疲れ果てた… 夏…俺に癒しを……
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