雪side

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雪side

家に帰り、俺の部屋を覗く 夏が、ぐ~すか眠っている 俺の枕を抱き締めて 「ふっ…どんだけだよ」 ほっとする 今日あった沢山の事での疲れが 少し取れる 風呂掃除をして、シャワーを浴びる 適当に何かつまみ 鏡を見ない様にして、歯磨きをする 夏… 枕を抱いて、壁の方を向いて 何故、そんなに壁際なんだ まあ、いいや 夏の後ろから抱き締めて寝る 夏の匂い… 夏の体温… 一気に疲れが取れていく 今日あった事全部どうでもいい ん? 夏が布団を剥ぎ始めた 「あ、布団ちゃんと掛けとけよ」 全然暑くないじゃん 「…おかえり…雪」 起きた? 「ただいま……夏、寝てんの?」 すやすや寝てる 寝言? 一瞬だけ起きたの? 今日の事知ったら また死ぬ程怒って、心配すんだろな 白峰さんとか、美月みたいに 夏もマトモな人間だから 俺だけマトモじゃないから 何でも…どうでもいい ただ…夏を泣かせない様にしなきゃ… ん…? なんか、揺れてる? 「あ…ごめん起こした」 「…夏…トイレ…行く?」 「行けるから大丈夫だよ。寝てな?」 「…助けて…欲しい時…叫んで…」 「ん…」 うっすらと見える… 夏…立ち上がるの上手くなった 歩くのも… ガチャ ザワザワ え? なんで…今… 眠いんだから寝ればいい やだ… ザワザワ やだ… 夏の背中… 傷つけたくない 寝ろ! 寝ろ! フラッシュバックかの様に… 何度も夏が部屋を出て行く映像が 勝手に頭に流れてくる 「~~~っ!」 やだ… 堪えろ かきむしるなら 自分の体にしろ 「~~~っ!」 自分の体 抱き締めたって… っ何にもならない! 助けてっ… 誰かっ… 怖い!怖い!怖い! 「雪!!」 「っ!」 夏… 今すぐ、しがみ付きたい! けど… 「雪!いつものなんだろ?!」 夏が… しがみ付ける様に 俺の前に寝転ぶ 「なっ…なんで抱き付かないの?!動けない?」 そう言って、俺を抱き締めてくる 「~~~っ!」 しがみ付きたい! けど…そしたらまた… 「雪…手、貸して」 やだ… 「なんでっ…こんなっ…力…」 夏が…無理矢理俺の左手を、俺の体から離す 「うりゃ!しっかり掴め!」 だめなんだって… 「は?何グーにしてんだよ?掴めないだろが!」 掴みたくないんだ! 「バカ雪!!こんな時に何考えてる!こっち見ろ!」 グッと顔を上げられる 「お前、震えてんだぞ?自分が苦しい事だけ考えろ!今これ、どうにかする事だけ考えろ!他の事何も考えんな!」 「~~~っ!…夏っ…」 知らないっ… 人がせっかく我慢したのに こんなにこんなに我慢したのに また… 背中に… とんでもない傷増えるんだから 「バカ雪。さっさと、こうすればいいんだ」 「っ夏…夏っ…ごめんっ!」 「謝んな。大丈夫だから」 「~っごめん…夏っ…ここに居てっ…!」 「居るよ。何処にも行かない。大丈夫」 「…うっ…~っ…なつっ…ここにっ…」 「うん。大丈夫…離れないから」 もうやだ… また…夏を傷つけた 夏を傷つけて安心するって何? 1番傷つけたくないのに 「…夏」 「あ…ちゃんと拭いといた方いいから…寝てな?」 「…拭かなくて…いい」 「ダメだ。すげぇ汗なんだぞ?」 「…俺…いいから…夏のっ…背中っ…」 「大丈夫だって。俺が戻るまでも、苦しんでたんだろ?早く気付いてやれなくて、ごめん。起きる時間まで休みな?」 「~っ俺の事…ほっといて…」 夏に背を向けたいのに 全然力入らない 「俺っ…嫌いっ…」 「そっ…俺は好きだよ」 「やめてっ…夏…もっ…構わないで…」 「やだね。そんなの雪の勝手だろ?俺だって、勝手にさせてもらう」 「~~っ…夏…」 「ん?」 伝えたい言葉 伝えない方がいい言葉 伝えたくて…飲み込む 「……夏」 「ん。黙って寝てろよ」 ぶっきらぼうな言い方なのに 優しい夏が好き 「…夏……」 「おお。早く寝ないと、くすぐったくなるぞ?」 色んな事気付いてるのに 気付かないフリして居てくれる 優しい夏が好き 「………なつ…」 「ふっ…おやすみ、雪」 俺が寝てる場合じゃないのに こうなった後… まともに起きてられない それに夏の声聞いてると もう… 安心して寝るしかなくなる ちゃんと夏の背中 手当てしたいのに 夏…ごめん こんな係にさせちゃって 逃げていいよって言ったのに 結局しがみ付いて こんな、普通じゃない奴に付き合わせて ごめんね… 「雪って、冬生まれなの?」 「え?全然?」 「じゃあ、なんの意味なんだろ?響き?」 「さあ?俺の母さん変わってるから」 「へぇ~?」 「夏は?夏生まれなの?」 「まあ、そうだけど、夏って、大きいって意味あんだって」 「大きい?」 「そ。希は稀。稀な程、心の大きな人になる様にだって」 「ふ~ん?」 そうだった 夏は… 稀な程心が大きいんだった だから 俺なんかを見捨てられないんだ でも… 心大きいからって 辛くない訳じゃないだろ? 俺の為についた傷 誰かに癒してもらわなきゃ 俺じゃきっと また増やしてしまうから 俺の傍に居ると傷つける 俺から離れた方がいい 夏を手放せって 思ってるのに 離れたくない もう離してあげられない じいちゃんまでなんて約束出来ないくせに 欲しいものも 大切なものも 何も要らなかったはずなのに どうしよう… 夏が欲しい 夏と一緒に居たい いつか、いっぱい泣かせる事になるって 分かってるのに
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