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「お待たせ~。好きなだけ取って」
鍋ごと持って来た~!
「ありがとうございます。あの、椅子でもソファーでも座ってて下さい」
「ありがとう。ほんとに綺麗にしてるね。床なんかピカピカしてる」
「あ…それは今日、暇過ぎて俺、掃除してたんで…」
俺1人分だし、これでいっか
「あっ!シチューって、口大丈夫?」
「全然大丈夫です」
お玉…お玉…
「それにしても、学生2人でここに住んでるって凄いね。あ、2人だから住めるのか?」
ダイニングテーブルの椅子に座って
白峰さんが聞いてくる
「旭陽さん…あ、俺の叔父さんが、お金持ちなんです」
「…あ…旭陽さんって…言うんだ……綺麗な名前だね?」
「?…そうですね。母さんも、よくそう言ってました」
ん?
なんか白峰さん…考え事?
よしっ
「白峰さん、ありがとうございます」
「いえ…」
立ち上がって、こっちに向かって来た白峰さんが
「お母さんは元気なの?結構離れた場所に居るのかな?」
と、聞いてきた
「母さんは、亡くなりました」
「…………え?」
「今年の始めに亡くなったんです。それで、叔父さんのお世話になってるんです」
白峰さんが固まってる
適当に誤魔化しとけば良かったか
「白峰さん?俺、ちゃんと大学行けてるし、夏も傍に居てくれ……え?」
白峰さんが抱き締めてきた
「…っ!……ごめんっ……ごめんね……」
「…大丈夫です。こんな事話したくらいで、別にどうにもならないです」
「…でもっ……だって………ごめんね…ごめんっ…」
そう言って白峰さんは、頭を撫でてきた
大人の男の人に頭撫でられるって
小学校の先生以来?
なんか照れ臭い
兄ちゃんとか…父さんとか居たら
こんな感じだったのかな
「白峰さん…大丈夫なので、そんな謝らないで下さい。でも、頭撫でて貰えたのは、ラッキーです。俺、父さん居ないので…こんな感じなのかなって思いました」
「っ!……そっか…そうだよね……ごめんね……」
なんで、ここで白峰さんが謝るのか分からないけど
沢山撫でてくれた
ほんとに、大切そうに撫でてくれた
「ははっ…ごめんね。突然、近所のおじさんに抱き付かれたら、通報されても仕方ないな」
そう言って白峰さんが、俺から離れる
「白峰さん…イチゴとシチュー、ありがとうございます」
「うん。余計な事聞いてごめんね?」
「いえ。全然気にしないで下さい」
そう言っても、何度も何度も謝って
白峰さんは、帰って行った
あんな人が父さんだったらって思う
けど
そうだったら、母さんを1人にするかな
そう思うと
やっぱり、ばあちゃんの顔が出てきて
きっと、汚らわしい奴なんだろなって思う
さっさとシチューを食べる
美味しい
ただのシチューだけど美味しい
お皿洗って歯を磨く
この顔に出会って
母さんの人生は最悪になったんだろう
消したいな
メチャクチャにしてやりたい
ドンッ
鏡の中のムカつく顔は全然無傷で
ドンッ
ドンッドンッドンッ
俺が消えない限り
消える訳ないじゃん
「……うっ…ははっ……っ…うぅっ……はっ…バカみたい……」
寝よ
「雪と一緒には居れなかったけどね」
一緒に居れなかったら意味ないじゃん
「凄く優しくてね~優しくて優しくてね~」
なんで優しいのに母さん助けてくんないの
「雪そっくりの可愛い顔~!雪~!チュッ」
やめてよ
俺もう中学生だよ
やめてよ
可愛いって言われたって嬉しくないよ
やめてよ
母さん捨てた奴と一緒にしないでよ
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