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ぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ
枝が伸びていっている。
下にいったり横にいったり、なかなか上に伸びない、ぐにゃぐにゃな枝。
ふらふら、いつも寄り道をしてばかりだけど、それでも前に前に伸びている。
見上げると、いつも体をまっすぐにのばした枝が見える。
すっと胸をはって、にょきにょきと空に向かって伸びている。
「いつかきっと太陽に届いてみせるぞ。太陽のそばに行って、なかよくなるんだ」
いつもそうひたむきに叫んで、伸びている。
ある日、いじわるな雨が森にシュザン、ザザンザ! と、叩きつけるようにふった。
「おいおい、こりゃあ、なんてめちゃくちゃに曲がってる枝だ、あははっ」
落ちてくるおおつぶの雨は、ぐにゃぐにゃな枝を見るなり、大笑い。
けれど、ぐにゃぐにゃな枝は、たくさんの木の葉に守られてあまりぬれなかった。
おおつぶの雨は誰に対してでもいじわるだから、まっすぐな枝も叩いていく。
ずぶぬれになったまっすぐな枝だけれど、それでもまったくへこたれない。
雨で体が重くなっても、背すじをぴんと伸ばして、にょきにょき空に近づいている。
分厚い雲で太陽がかくれてしまっても、雲の向こうを目指してる。
雨がやんで、地面には水たまりがいくつもできていた。
ぐにゃぐにゃな枝は、下に伸びていっているから、地面はとても近い世界。落ちている石ころがどんな形をしているのかも分かるくらい。
地面はどこを見ても水にぬれてキラキラしている。
空では分厚い雲がはれて、太陽が元気な姿をあらわしていた。
まっすぐな枝は太陽の光を浴びて、ぬれた体をあっというまにかわかしてしまった。
ひたむきに空に向かって伸びていっているから、地面がキラキラしているのを知らない。
キラキラしたものは夜空の星のように、太陽のそばにたくさんあるはずなんだ。
ぐにゃぐにゃな枝は、ぐにゃぐにゃ伸びて、池の中に入ってしまった。
水の世界は冷たいけれど、魚や水草、見たことのない生き物ばかり。
「はじめまして」とあいさつすると、魚たちもめずらしげにそばに寄ってくる。
ただ、太陽の光はずいぶん遠くになってしまった。
家々より高く伸びていくまっすぐな枝に鳥がとまった。
高い空から飛んできた鳥。そのくちばしには魚をくわえている。
「この枝からだと、次の食べ物がすぐに見つかりそう」と鳥は魚を飲み込んだ。
羽を広げて大地におりていくその鳥を、まっすぐな枝は少しうらやましく見送った。
ぐにゃぐにゃな枝が池から出ると、太陽の光がいつも以上にまぶしく見えた。
ビルより高く伸びたまっすぐな枝の頭が、太陽に届いているように見えた。
「ぼくたちって、同じ木から生まれた枝なのに、こんなにもはなれちゃったんだな」
ぐにゃぐにゃな枝は、ぐぐっと上を向きながらも、土の上をぐにゃぐにゃ伸びていく。
まっすぐな枝は、いっしょうけんめい空気のかべに穴を開けて空を昇っていく。
太陽は、大空というステージのまんなかで、歌を歌い続けている。
太陽の歌は、大地の生き物たちにたくさんの元気を与えてくれる。
「そうだ、おれは、地面からたくさんの栄養をもらって、空に伸びていってるんだよな」
夜になっても、ぐにゃぐにゃな枝は休まず伸びていく。
ぐにゃぐにゃな枝のかげにかくれて、眠ろうとしている動物たち。
ぐにゃぐにゃな枝は、みんなが静かに眠れるよう、そろそろと伸びていく。
「この枝、お日さまのにおいがするね。明日も晴れるといいね」
太陽に会えるのはまた明日。まっすぐな枝は一休みして、夜空をながめていた。
月明かりに照らされるまっすぐな枝に、羽根を持った虫たちが集まってきた。
「こんな高い空なのに、大地のにおいがする枝だ」
まっすぐな枝も、幼虫たちと遊んでいた幼い日々を懐かしく思った。
ぐにゃぐにゃな枝は空を目指したくて伸びていこうとした。
まっすぐな枝は、また大地のある下を見てみたくて曲がろうとした。
ぐにゃぐにゃな枝からは新しい枝が生まれて、ぐにゃぐにゃと伸びていっている。
体には葉っぱや小さな花も咲かせている。
大地を近くに感じながら、上を向いて、ぐにゃぐにゃと小さな冒険を繰り返している。
まっすぐな枝は、太陽に手を伸ばしながらも、横に曲がってまっすぐ伸びていた。
体には葉っぱや小さな花も咲かせている。
空と大地の両方を見ながら、鳥や虫たちの小さな冒険話にまっすぐ耳をかたむけている。
同じ木から生まれた枝。
お互いの伸びた枝を見ながら、
「あいつは、今日もあいつらしく元気に伸びていってるな」
そんなふうに、うれしい気持ちになるのだった。
おわり
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