Prologue

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 バタバタと足音がどんどんと近付いてくる。 怖い怖い怖い。 なんだなんだ、なんなんだ。 俺は何かしでかしてしまったのか。 追われ始めてから幾度と無く、この地獄の様な恐怖の追いかけっこの原因について心当たりは無いかと思考してみてはいるものの、全くと言って良い程心当たりが無い。 そりゃそうだ。そもそもヤから始まる職業に就いて居そうな方達と関わった事など無ければ、その様な度胸や肝も無い。記憶の限りだと平凡平和、一般庶民としてしか生きて来た事は無いのだから。 そろそろ息が切れそうだ。いつ終わるのだろうかこの追いかけっこは。 背後の鬼達が疲れ果てて諦めるまで? それとも自分が捕まるまで? 捕まったらどうなる? 死ぬの? 殺されるの? ....ふざけるな。どうして死ななくちゃならない。何したって言うんだ。ただ人助けをしようとしただけじゃないか。それの何が駄目だったというんだ。 走り続けているせいか胸の辺りがヒリ付いてきた。ふと視線を手元に送り、腕時計を確認すると時刻は21:27。 まだ職場を出て帰路に着き始めてから約20分程しか経っていなかった。 という事は、この事態に陥る羽目になる謎の人物と出会した辺りの道を歩いていた時間から現在まで逆算したとしても、追われ始めてから未だ5分も経過していないという事になる。 嘘だ。 もう既に30分は走り続けてるような気がしていたのに。
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