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着替えを終えた後、今までの出来事と昨夜の事件に関連があるのかについて考えていた。
しかしどうも繋がらない。
己の知る限り、今世の彼はあのような怪しい輩に追われる羽目になるような出来事は無かったはずだ。
しかも奴らは明らかに人間だった。
あまりに急だった事に油断し、そして数が数なだけに少々手こずりはしたが。
…ああ、今思い出しても情けない。あの程度で負傷し無様な姿を出会ったばかりの彼に見せてしまった事がとんでもなく恥ずかしい。不覚だ。どうにか挽回せねば。でなければ何か有事の際にこれから彼に頼って貰えなくなるではないか。……ああ、何度思い返しても忌々しい。
「あ、あの……大丈、夫ですか?」
「あ……?」
ああ、不意の返事をしてしまったせいか牽制するような声が出てしまった。
「い、いいいえ!あの…!血が……」
ほら彼が動揺しているじゃないか。
彼に心配させてしまった、いや怯えているのか?どちらしろなんて事だ。
彼へ負担をかけるつもりは無いのだが、我ながら上手くいかないものだ。
見下ろしてみれば自分の拳から流血している。
立ち竦んだまま忌々しい事を思い出しているうちに、少々力みすぎたらしい。
彼の訝しむ態度はこれが原因か。
「ああ、この程度なんて事は無い。すぐ消えるだろう」
そう言って手を開いて見せると、傷があった手のひらには既に血の跡のみで傷は消えていた。
ほら、俺の心配など何もする必要は無いのだと彼の顔を見れば眉間にシワを寄せている。
なぜ君が痛そうな顔をしているんだ。
そういう俺は痛くはない、痛みには元来強いんだ。しかしそのような顔をされると、まるで君が痛みを肩代わりしているみたいだ。
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