1.5 謎の彼目線

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 ちびちびと紅茶を啜っていた彼だったが、ふと顔をあげた。何かを言いたそうだが、黙って俺の顔を見つめたまま何かを悩んでいるようだ。 そして意を決したようにくちを開いた。 「あの、紅さんは色々と俺の事をご存知なようでしたが」 「ああ」 「てことは… 俺の名前も知っていますよね?そういえば俺も名乗っていないなと思ったのですが」 ああ、名乗ろうとしたが既に俺が知っているかもしれないと考えたという事か。 「ナナセだろう?」 知ってはいるので呼んでみたが。 なんだか変な感じだな。早く慣れなくては。 七瀬…ナナセ……君の現在の新しい名。 出会ってこの数時間、なんとなく呼べなかった。無意識に呼ばないようにしていた我ながら狡いと感じる。 「あ、そうです。一応礼儀として、自己紹介させておいていただきますね。茅野七瀬(かやのななせ)です」 そういって七瀬は軽くお辞儀をした。 つられて俺も見よう見まねで頭を下げる。 そうだ、人間の中でも特に日本人は挨拶のときに頭を下げるのだったな。七瀬の傍にこれから居る以上、誰かしらと出会した時のために覚えておかねば。 覚えなければいけない事が多いな。 「七瀬」 「はい?」 俺が手始めに呼んでみれば、七瀬はすぐに返事をして俺の目を見てくる。 色素の薄い少しベージュがかった瞳。 その儚げな瞳を縁取る長い睫毛。 その瞳に自らが映っている事を視認し、胸の辺りが熱くなった。
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