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良いな、君の瞳に映れるのは。
「せっかくだから呼んでみた」
「あはは、何ですかそれ! そんな急いで呼ばなくても、これから呼ぶ事あるかもしれないでしょう?」
そう言って破顔した七瀬の発言を噛み締めた。
これから呼ぶ事があると、そうかこれからたくさん君の名を呼べるのか。
接触してはいけない。
その誓約はもう破って放棄してしまった。
ならもう良いのだな……忌まわしい誓約などに縛られず、彼の今世に俺は存在しても。
決して良くは無いが、これからどんな罰が己に降りかかろうとも彼と存在出来ているという事に比べれば、何でも乗り越えられる気がした。
そうしみじみと噛み締めていると、七瀬が突然大きな声を出して慌ただしく立ち上がった。
「ああーーっ‼︎ やばい、仕事の時間忘れてた…… ごめんなさい紅さん。ちょっと俺急いで出なくちゃ、慌ただしくなりますがゆっくりしててくださいね!」
「あ、ああ……いや待て。あんな事があったというのに仕事などに行くのか?正気か?」
確かに職場に赴いている姿も時折り見かけてはいたが、あのような事件があった直後だ。
俺が保護していた以上、奴らに指一本触れさせた覚えも無ければ怪我ひとつもさせてはいないが…。
「行かなきゃ、俺担当の人が今日予約入ってたはずなんです。……ああ、とにかくシャワー浴びてこなきゃ」
「し、しかし外傷は無くとも疲労から何かしらの不調が出る可能性だって考えられる」
何とか考え直さないかと引き止めようと試みるが、七瀬はこちらを見向きもせず着々と着替えを取り出す。
ああ、これは本当に送り出さないといけないのだろうか。
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