18人が本棚に入れています
本棚に追加
「またおかしな奴らに襲われるかもしれないという恐怖は無いのか?」
するとピタリと七瀬は止まった。
そしてこちらを振り向くと迷い無く答えた。
「恐怖はありますよ。でも俺を指名してくれている、必要としている患者さん達が居るんです。彼等は俺を待ってるんです。その期待に答える為に行かなくちゃ」
あくまでも他人の為、か。
そんな所も変わらない君にはいつまで経っても心配させられぱなしだ、とは言えないが。
そんな所にもずっと惚れているのだから仕方ない。
「なら俺も着いて行くからな。拒否はさせないぞ、帰りもだ」
「それは願ってもないですし、心強いですが…… 頼りっぱなしで申し訳ないです」
「俺がしたくてする事だ。何も申し訳ないなどと思わなくて良い、むしろ拒否されようと実行するつもりだった」
正直にそう言ってしまえば彼は、ふふっと笑った。
「紅さんって、見た目も話し方も強引で怖い人なのかなて最初思ってたんですが… 意外と優しいですよね」
「君にだけだ」
「……もう、そうやって軽々と小っ恥ずかしい事言わないでください」
ああ、また耳が赤くなった。
何かの印なのだろうか。
意味を問おうとしたが、七瀬がまた慌ただしく動き始めた。
「ゆっくり話してる場合じゃなかった!! 次こそ俺シャワー行ってきますね! 」
「あ、ああ」
着替えを小脇に抱えて通路へと小走りで行く姿に、少々呆気にとられながら見送った。
とにかく同行を許可されたので安心だ。
飲み終えたカップを置き、残りの菓子を掴んでゴロンと横になる。
七瀬はクッキーが好きなのだろうか。
確か昔も焼き菓子をよく食べていた気がする。あとで好きな物を聞いてみよう、何か変わっていたらそれも全て知りたい。
彼の事を知りたい…。
通路の向こうからシャワーらしき水の流れる音が聞こえてくる。
その音を聞いていると瞼が落ちてきた。
最初のコメントを投稿しよう!