1.5 謎の彼目線

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久しぶりに本来の自分の姿になる開放感に無意識にも少し歩調が弾む。 通路にある鏡を横目に見れば揺れている己の尻尾が見えた。狭いせいか壁をバシバシと叩いてしまっている。 今頃なんの音かと七瀬が気にしているかもしれない、早く行かねば。 そして前足で扉を開き、覗けば待たせていた七瀬と目が合った。 「えっ犬……? ど、どこから」 違う。犬じゃない俺だ。 いや犬ではあるが。 七瀬のほうに近寄って行き、足元へ行くと七瀬が後ろへ少し後退った。 何故? 「ちょ、ちょっと…!デカ… …俺の腰くらいまであるような…」 まさか犬が苦手なのか? それは誤算なんだが……。 とりあえず先程の失態である床に溢したクッキーの欠片を食べる。 サクサクと食べていると、キョトンとした顔で七瀬がこちらを見つめてきた。 「もしかして紅、さん……?」 気付くのが遅いぞ、他に誰が居るというんだ。 本当ならそう言ってやりたい所だが、この姿の時は喋れないのが悔やまれるな。 とりあえず肯定するように吠えて七瀬の足元に擦り寄ってみる。 まだ少し腰が引けているようだが先程よりはマシだ。 「まさか犬になるなんて…… さっきのは言葉のアヤだって言ったのに! もしかして本当は犬だったりして」 あながち間違いじゃないのだが。 ただの犬ではないがな。
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