18人が本棚に入れています
本棚に追加
「締め過ぎちゃった?ごめんね犬に触るの初めてで… ちょっとテンション上がっちゃった」
そういって七瀬は腕の中から解放してくれたが、まだ触れ足りないというかのようにソワソワと足元をつついてくる。
なんとなくそれに応じて七瀬の手に合わせてポンポンと前足で叩き返し、謎の遊びに付き合う。
俺は猫じゃないぞ。
そうしていると次は七瀬の興味が俺の耳に移動した。
チョンと耳に触れてくる。
「耳分厚いんだね〜モフモフで立派だ! 可愛い〜〜」
そう言って耳を撫で回してきたり、縁の辺りをツンツンとつついてくる。
やめろやめろ、耳は弱いんだ。
本当勘弁してくれ。
ああ、やばい……早く戻ろう。
焦った俺は先程の部屋に戻る事を忘れて、人の姿に変化した。
「え、ええっ!! あ、ちょ……紅さ」
振り向くと顔を真っ赤にして目を逸らす七瀬が居た。
「き、君があまりにも触るから…!」
喋れなかった分、戻ってすぐ文句をぶつけようと口を開いたが七瀬は俯いて真っ赤になり震えていた。
何故こっちを見ない?
さっきはあんなにも近くで見つめて来ていたというのに。
あまりにも待遇が違うじゃないか。
続けて不満が漏れそうになったが、その理由は自分の足元を見ればすぐにわかった。
ああ……先程の部屋に服を忘れていた、しまった。
「……すまない。ふくをとってくる」
そう一言残して通路へ全裸で歩いて行く俺に、消え入りそうな小声でハイ…と呟く七瀬の声が聞こえた。
ありとあらゆる誤算だったな…。
しかしあの姿だと、あんなにも七瀬は気を許してくれるのか。
少し、期待してしまうかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!