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 忘れ物無かったかなぁなんて頭の中はグルグルしていっぱいだけど、それ以前に昨夜仕事用の鞄ごと失くしちゃったんだって思い出した。 また色々揃えないとなぁ……。 紅さんは気付いていなかったけど、さっき自宅を出た時に鍵だって壊れてた事を思い出した。 なので施錠も出来ていない。盗まれて困る物が無い事だけが救いだ。 今日1日くらいどうにかなるかな……。 昼休みにでも大家さんに連絡入れとこう。 あとはスマホだって買い直さなくちゃ。 あああ… やらなきゃいけない事いっぱいだ。 確か俺の担当患者の人は午後に居たはずだから最悪大丈夫かもしれないけど、遅刻してる事だって院長に叱られるし…。 「大丈夫か?七瀬。そんなに出勤が辛いならやはり今日だけでも休む事だって」 どうやら色々思案している様子が顔に出ていたらしく、紅さんが心配そうに伺ってきた。 「いえ、大丈夫ですよ! 紅さんこそあれだけ大怪我してたんですから家に居ても良かったのに……」 そうだ。 撃たれたって言ってた、あの治りきらずにいた傷は大丈夫なのだろうか。 チラリと視線を彼の脇腹の辺りにやると、その視線の意味に気付いたらしく服の裾に手をかけはじめた。 あ、いやこんな大通りでそれは…。 「恐らくもう塞がっている。…気になるなら確認するか?」 「ちょ、ちょっと分かりましたから! 外では服は捲ったりしないで!! ちゃんと着てましょうね……ははは」 いそいそと服を捲りあげて脇腹をホラホラと見せてこようとする野生児を急いで静止した。 だが恐る恐る周りを見てみると、時既に遅しで通り過ぎてく人々がヒソヒソと何やら話しながらコチラを見ている。 視線が痛い。とても痛い。 見目の良いガッシリとした成人男性が大通りで半裸になろうとしていたのだから、それはもう注目の的になるしかないってものだ。 その巻き添えをくらう俺。 この野生児に最初に教えるべきなのはTPOなのかもしれない。
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