2

2/25
前へ
/74ページ
次へ
 そして職場の前に到着した。 立ち止まって振り返ると、紅さんはキョロキョロと周りを見渡している。 「着きました。わざわざ送っていただいてありがとうございます」 そう言ってお辞儀をする。 紅さんは無言で頷くと、俺の横にあるビルを見つめた。 「きみの職場は此処なのか?」 "やぎ歯科医院"と書かれた看板を俺は指差して答える。 「ええ、そうです。俺ここの研修医をしているんです」 そういってポケットから名刺を取り出し、冗談任せに紅さんに差し出して言ってみた。 「もし歯とか口内の怪我したら診させてもらいますよ?」 それを聞いた紅さんはジーっと俺の名刺を見つめていたかと思えば、ふいっと横を向いてしまった。 「どうせ俺はすぐ治る。それにきっとお前達の歯と俺の歯は違う」 ん?何だか拗ねてる? 「え、今人間ですよね?口内は違うんですか?」 思わず身を乗り出して尋ねる。 どう見ても今人間の姿をしているように見えるんだけど。 すると彼は少し屈み、俺の顔の前に近付くとアーーーと大きく口を開けた。 あ、本当だ違う。 牙がある…… どちらかというと口内は獣という感じなんだ。 「すごい… 本当ですね、てっきり全て人と同じになってるかと思ってました」 それにしても牙も全て真っ白だ。 綺麗だな……。 「ッ!? な、なにする」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加