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「え、あ、ごめんなさい……つい」
見入っているうちに触れてしまっていたらしい。
離れてしまった紅さんはくちを手の甲で抑えながら、どこか恨めしそうに見つめてくる。
面白かったけど、もう見せて貰えないかも……。
そうそう、いつまでも病院の前に居ないで行かなくちゃ。
「じゃあ、そろそろ俺行って来ますね。帰り道はわかりますよね?」
「え、ああ。…… お前だけ行くのか?俺は?」
まさか院内まで着いてくるつもりだったのか?
それはさすがにちょっと無理だ。
「院内まではちょっと…… 患者さんも同僚達も居ますし」
そう答えると、そうかと少し思案顔で黙り込んでしまった。
確か帰りもと言っていたから、てっきりまた帰りに来るのだとばかり思っていた。
まあいくら人とは違うと言っても家ではあれだけ寝ていた事だし、疲れてはいるはずで。それなら休んでてもらうのが1番だ。
「じゃあ紅さんは一旦」
「あ、七瀬! やっと来たんかー」
一旦帰ってお休みになってから又迎えに来て貰えますか、と伝えようとした瞬間思わぬ人物の登場に遮られてしまった。
あれ?まだ彼は診療途中なはずじゃ。
ニコニコと出て来たかと思えば、紅さんと俺を交互に見つめている。
空気を呼んでさっさと立ち去って欲しい。
「お疲れ様です、中津先生。どうされたんですか?」
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