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第12話 リスタート
黄色のランプが点滅している。権藤が慌ててロミオの上に屈み込んだ。
「あれ。完全放電だったのに」
「あなた。テーブルの下にあるのは充電器じゃないの?」
「あ、そうだ。そうか。誘導で微弱な充電が出来たのかな」
確かに充電器がそこにあって、そしてロミオは顔を上げた。
「ロミオ、復活?」
栞は小さな声で呟いた。その瞬間、
「ワン!」
え? 四人は固まった。 ワン?
「権藤さん、ロミオの声ってオフでしたよね?」
「その通りです。ビープ音回路を使って自律制御で出せるのかな」
権藤は頭を捻る。しかし亜希子が冷静に告げた。
「違うわよ。それはロミオの話。今のはジュリ。自分はジュリだって自覚して、安心してワンって言ったのよ」
「え?」
「自律型ってそう言うことでしょ?」
「そ、そうかも知れん」
権藤は天井を仰いだ。
ジュリは栞が手に握る杖をちらちら眺めている。栞にはジュリの想いが判った。流石は優秀な元介助犬だ。
「ジュリは私に言っています。もう杖は要らないよって。ロミオを追っかけて、それで治ったよって。ジュリはみんな覚えてる」
母が手で瞼を押さえて言った。
「さっきのワンは、ジュリと栞のリスタートの合図ね」
栞も溢れる涙を指で拭いながらジュリの頭をそっと撫でた。
「私、頑張るからね。本当に有難う。ロミオとジュリ」
ロミオとジュリは一緒に頷いた。
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