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第13話 ワンちゃん生活
「あのう、栞さん。それからお母さまも」
亜希子は夫をちらっと見た。
「あなた、怒らないでね。栞さんにお渡ししたいものがあるの。ちょっとお待ち下さいね」
亜希子は部屋を出て、すぐにケージを抱えて戻って来た。それを床に置くと入口を開けて手を突っ込む。
「ロミオの代わりにはならないけど、入学祝いも兼ねて如何ですか?」
亜希子の腕には寝ぼけた本物の仔犬が抱えられている。
!?
「亜希子、どうしたんだ、その仔犬」
「怒らないでねって言ったでしょ。私、ジュリがいなくなって淋しかったから、その、衝動買い」
「えー?」
「でもジュリが戻って来たから」
栞は目を輝かせた。
「ね、いいでしょお母さん! 私がお世話をちゃんとするから」
栞は杖を放って、亜希子から仔犬を受け取った。
「わお! 今度こそワンちゃん生活だ! よろしくね、ロミオ」
「え? またロミオなの?」
「だって、ロミオはパートナーだもん。あ、と言うことはいいってことね。有難う、お母さん」
栞に抱えられていたロミオは喧騒に目を覚ました。そして小さな、
「ワン!」
を放った。
【おわり】
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