第13話 ワンちゃん生活

1/1
前へ
/15ページ
次へ

第13話 ワンちゃん生活

「あのう、栞さん。それからお母さまも」  亜希子は夫をちらっと見た。 「あなた、怒らないでね。栞さんにお渡ししたいものがあるの。ちょっとお待ち下さいね」  亜希子は部屋を出て、すぐにケージを抱えて戻って来た。それを床に置くと入口を開けて手を突っ込む。 「ロミオの代わりにはならないけど、入学祝いも兼ねて如何ですか?」  亜希子の腕には寝ぼけた本物の仔犬が抱えられている。  !? 「亜希子、どうしたんだ、その仔犬」 「怒らないでねって言ったでしょ。私、ジュリがいなくなって淋しかったから、その、衝動買い」 「えー?」 「でもジュリが戻って来たから」  栞は目を輝かせた。 「ね、いいでしょお母さん! 私がお世話をちゃんとするから」  栞は杖を放って、亜希子から仔犬を受け取った。 「わお! 今度こそワンちゃん生活だ! よろしくね、ロミオ」 「え? またロミオなの?」 「だって、ロミオはパートナーだもん。あ、と言うことはいいってことね。有難う、お母さん」  栞に抱えられていたロミオは喧騒に目を覚ました。そして小さな、 「ワン!」  を放った。                          【おわり】
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加