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「フラれた腹いせにヤリまくってごめんなさい、とか?」
「いや、浮気して、だろ?」
「浮気相手に捨てられたとか?」
「なんにしても、あんなん見せといてよく連絡してこれるな」
二人には、引っ越しの時に香里の浮気が原因で別れた事しか言っていない。
あの、衝撃的なブツを見て、もはや別れた原因などどうでもいいような状況だったし。
それでも、思うのだ。
香里の言動がおかしいと。
「なんか……色々と想像以上でわけわかんねぇ」
「篠井。俺たち男が女のこと、わかるはずないだろ? 女が男をわからないのも同じで」
柳田がやけに悟り顔で言った。
谷も頷く。
「わからないからこそ、わかろうとする努力が必要なんだよ」
「なに、先輩面して言ってんだよ」
「先輩だも~ん」
「だも~ん、じゃねえ! 俺だって――」
また、スマホが唸った。
「しつこすぎだろ」
谷が呟く。
が、違う。
羽崎からのメッセージだった。
〈ちょっとこま〉
「こま?」
意味がわからなくて、思わず声に出した。
「こま?」と谷と柳田も復唱する。
「いや、羽崎からのメッセージで、ちょっとこま、って」
「ちょっとこまかいのなくて」
「ちょっとこまいが食べたい」
二人が面白がって文字遊びをしだす。
「こま……こまいぬ!」
ちょっとこまいぬ、ってなんだよ。
「小松菜買って来て!」
小松菜ってどんなんだよ。
「こま……こま……」
「お前ら、面白がり過ぎだろ。羽崎がそんな――」
そこで、気が付いた。
「――ちょっとこまってて」
「それだ!」
谷が俺を指さす。
「電話してみろよ」
柳田が真顔で言った。
俺は発着信履歴の五番目にある羽崎の番号をタップした。
『呼出中』の文字が表示される。がそれは、すぐに消えた。
『もしもし、お兄ちゃん?』
お兄ちゃん!?
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