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「そういえばさ、浦野君って渡辺君と仲良いよね?」
「まあ、同じ部活入ってるから」
「……実は友達で渡辺君のこと良いなって言ってる子がいてさ、今度それとなく彼女いるか聞いてみてくれない?」
「そうなんだ。わかった、探っとく」
「ありがとう」
橋元さんは、一歩こちらの方に踏み出しながら言う。
「浦野君もうちのクラスにもし気になる女子いたら言って、私でよければ協力するから」
俺は咄嗟に視線を泳がすと、アイスの棒を再び口に咥える。
「実は俺、恋愛対象が男みたいなんだよね」
「えっ、そうなの?!」
「だからごめん、気持ちだけありがたく受け取っとく」
「いや、むしろ私の方こそ無神経なこと言ってごめん」
小さく頭を下げてから、橋元さんは急にがばっと勢いよく顔を上げた。
真剣な眼差しを向けられて思わずたじろぐ。
「っていうか、もしかして渡辺君のこと……」
俺は顔の前で両掌を振る仕草をした。
「違う違う。あいつとは本当にただの友達だから」
「あ、そうなんだ」
「ちなみに、洋輔ともただの友達だから安心して」
俺がそう告げた途端に橋元さんは頬を赤らめた。
「べっ、別にあいつとはそんなんじゃ……」
「取り替えてきた、ホームランバー!」
橋元さんの言葉を遮るように背後から駆け寄ってきた洋輔が、右手に握りしめたアイスを差し出す。
「ほら、これ凛の分ね」
目を白黒させながらアイスを受け取った橋元さんに、いつもの「にぱっ」という効果音が聞こえてきそうな笑みを浮かべて洋輔が言う。
「食べな食べな。今日暑かったから、顔真っ赤なってんじゃん」
「………?!!」
何も知らずにトドメの一撃を放った洋輔に、俺は思わず肩を震わせる。
先生が言っていた「なんか持ってんだよな、あいつ」という言葉に、とうとう信憑性が出てきたような気がした。
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