1.スノードーム症候群

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1.スノードーム症候群

「スノードーム症候群ですね」  両親はそう言われ、病院の診察室で目を丸くしたそうだ。  幼少期から病気がちだった俺はある日、なんの前触れもなく高熱を出した。  その日は両親とも帰りが遅い日で、唯一家に残っていた兄が俺を病院まで背負って行ってくれた。  体温を測る事ができないほどの高熱なのか、脇の下に挟むと体温計は数秒でエラーになった(結局、病院の体温計を三つも壊してしまった)  そうして仕事を早上がりして駆け付けた両親に医者は「スノードーム症候群」という聞き慣れない病名を告げた。  人にはごく稀に突然変異で奇妙な体質や能力を持つようになる"変種"が存在するそうだ。  高熱だと思っていたそれが実は真逆で、体温計で測れないほど俺の身体は冷たくなっていたらしい。  本来ならば素手で触れないような冷気を帯びている俺を背負ったせいで、兄は両腕に重度の凍傷を負った。  一生消せない、それは俺にとっての戒めだった。
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