2.出会い

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 掠れる俺の声を聞いて、ソファの肘掛けに肘を置いて渡辺がひとつ瞬きをした。  膝の上にティッシュ箱を乗せると、俺は俯きながら自分の生い立ちについて話し出した。  兄に連れられて病院に行くと、いきなり『スノードーム症候群』だと告げられたこと。  子供時代の大半を変種専用の施設で育ったこと。  中学時代は『変種は感染する』という噂のせいで辛い思いをしたこと。  あれもこれも打ち明けた。  こんなこと誰かに話したのは、生まれて初めてだった。  くしゃくしゃに丸めたティッシュを握りしめながら、いつの間にかチャプター画面に切り替わっていた画面を見詰める。  僅かにソファが揺れたのを感じると、暗い室内で渡辺の声がぽつりと言った。 「姉貴が前、ここの生徒だったんだ」
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