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「勧誘失敗だな」
洋輔が渡辺に向かって両手を顔の前で合わせながら言う。
「ホラー映画観るときだけ誘って〜」
「なら、ちょうど良いじゃん。浦野、ホラー苦手らしいから」
からかうように眉をくいっと上げて言う渡辺に向かって、俺は口をへの字に曲げてみせる。
俺達の間に交わされる無言のやり取りを遮るように、人差し指をぴんと天井に向けた洋輔が突然口を開いた。
「俺も湊も同じ浦野だからさ。ナベっち、俺のこと洋輔って呼んでいいよ!」
「ナベっちって……」
さらっと放たれた聞き慣れないあだ名に思わずツッコミを入れると、渡辺がこちらを見下ろしながら言う。
「じゃあ今度から、湊って呼んでいい?」
「えっ、いいよ」
「はぁ?! 何で俺の方じゃなくて湊なのぉ」
「……なんとなく?」
「なんとなくで負けたっ!」
大袈裟に胸を押さえて机の上に突っ伏する洋輔の頭をがしがしと撫で回すと、渡辺が手を叩いて笑い出した。
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