1.スノードーム症候群

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 12歳になると施設を離れ、ようやく俺は実家に戻った。  年齢とともに次第に体質も変わってきて、以前のように体内で発生した強い冷気によって、触れるものに凍傷を負わせるような事はなくなった。  長い間施設の中で過ごしてきた俺にとって、外の世界は何もかもが新鮮だった。  すべては順調に進んでいる筈だった。  "あれ"が起こるまでは。  テストの答案用紙が返却された日、予想よりも悪くない結果だったことに安堵していると後ろの席に座っていた奴に肩を叩かれた。 「なんか、お前の周りキラキラしてね?」  声だけ聞いた隣の席の生徒が「はぁ?」と半笑いを浮かべながらこちらを向くと、途端に目を丸くした。 「マジだ、なんかキラキラしてる」 「やっぱそうだよな」  つられて周りの席の奴らが次々と振り返るから、教室内はちょっとした騒ぎになった。 「顔んとこ、雪っつーか紙吹雪みたいなの舞ってる」 「えっ、それどうなってんの」  前の席に座っていた中村さんが「気の毒に」と言いたげな表情を浮かべて、俺に向かってそろりと手鏡を向けてくれた。
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