1.スノードーム症候群

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 自分の容姿をランク付けするならば、中の下くらいだと自覚している。  眠そうだねとよく言われる目がコンプレックスで、鏡を見る度にうんざりする。  こんな容姿の奴が、事あるごとにキラキラした紙吹雪もどきを纏っていたら「見合わない」と馬鹿にされるに決まってる。  そして何より厄介なのは、この紙吹雪が舞うのは感情を露わにしたときなのだ。  喜んだり悲しんだりすると、それこそスノードームを揺すった時のように顔の周辺にキラキラが舞い上がる。  すなわち、恋愛感情なんてすぐ周囲に筒抜けになってしまう。  俺はなるべく"鈍感"でいるように心がけた。  給食で好きなメニューが出たとき、国語の教科書に載っている物語に感動したとき、しばしば紙吹雪が舞ってしまう事もあったけれど 周囲のクラスメイト達は「また始まった」だとか「ウケる」と多少冷やかす程度で済んでいた。  床に散らばった紙吹雪を箒で掃こうとすると、いつも中村さんが塵取りを持ってきて手伝ってくれた。  申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
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