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1 エタニティ
女性が一人、建物の中を進んでゆく。
奥にある木製の大きなテーブルにブリキのジョウロを置くと、壁にあるスイッチを入れる。
明るくなった室内は、まるで森のようだった。
テーブルの奥には大きな大木。
室内にあるにもかかわらず、窮屈な感じはなく、のびのびと枝葉を茂らせている。
女性は、大木に笑いかけると、
「おはよ」
と、軽く挨拶し、テーブルの前で通路を振り返る。
通路の両脇には所狭しと木々が並べられている。
天井に届かんばかりのものもあれば、芽吹いたばかりのものもあり、雑然としているようで、不思議と落ち着く空間だ。
「おはようございます!今日も一日、よろしくお願いします!」
女性はお辞儀をすると、ブリキのジョウロを持ち、一鉢一鉢に水をやりつつ、語りかける。
「今日は水をたっぷりめですね?」
「水じゃない?じゃあ、栄養の方がいいですか?」
「わぁ〜花が咲きましたね!すごく綺麗です!」
など、まるで人に話しかけるように、対話をしながら世話をする。
女性の手が止まる。
振り返って、一つの鉢に歩み寄った。
「……もしかして、今日ですか…?」
当然、植物からの答えはない…が。
「上手くいくといいですね」
女性はそう言って、微笑んだ…。
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