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2 不思議な花との生活
「………?」
浩介は気配を感じて、読んでいた雑誌から目を上げる。
そこには、あの木がある。
店から、坂崎家にやってきてからもう少しで3ヶ月になろうとしていた。
リビングに置かれたこの木は、成長し、ずいぶんと丈がのびて、葉の数を増やし、今や浩介の膝くらい。
本当に不思議な木で、意志や、感情…と呼ぶにはささやかな、気配のようなものを発することがある。
浩介や、妻、二人の子供達も感じることがあるというが、嫌なものではなく、むしろ見守られているような感じがする…というのが、全員の意見だった。
「あ。また蕾がついてる」
初めてこの木をこの家に持ってきた時、発見したのは妻の明美だった。
「あ。見て!こうちゃん。蕾がついてる!」
「…あれ、本当だ」
確かに蕾がついていた。さっき店で見た時は気が付かなかったが、確かに一つ、蕾がついている。
日に日に大きくなり、一週間後には、少し丸みはあるがスッとした印象の白い花が咲いた。
大体木には花が咲く時期というものがあるので、今がその時期だと明美は思っているようだが、浩介は何だか違うような気がしていた。
最初はこの家にきた時。
二つ目はその一ヶ月後にあった、作文のコンクールで小四の息子新が入賞した時にも、花を咲かせていた。
そして今回は、もうすぐ明美の誕生日だ。
家族の良い事がある時に、咲いている…?
そう思わずにはいられない。しかし、だとしたら、本当に不思議な木である。まるで、家族の一員のような…。
でも、一緒に喜んでくれてるって事だから、良い事だよな。
浩介は、今度ガーデニングが趣味の同僚にこういう事はあるものなのか聞いてみよう…と思いながら、雑誌を再び読み始めた…。
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