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3 家族の危機
「危険を知らせてくれた……?」
更に月日は流れ、トライアルの終了が間近に迫ったある日の事、浩介は、明美の言葉を聞いて、思わずあの木を振り返った。
木は更にのびて、浩介の腰辺り。例の「気配」や、花も相変わらず。そんな木が、危険を知られてくれたのだという。
「そう、実はね、今日…」
明美は、昼間、お茶を飲もうと少量の水を鍋に入れ、コンロで沸かそうと火にかけた、そのタイミングで友人から電話があり、鍋の存在を忘れてしまったのだ。
その時、あの木から、強い危険を知らせるような気配がして、明美ははっと、鍋の存在を思い出し、慌てて止めたのだという。
鍋はすでに、空焚きの状態だったらしい。今のコンロはあまり温度が上がると止まるが、危険な事に変わりない。一歩間違えば火事になっていたかもしれない。
「ごめんね。もうこんな事無いようにするから…でも、本当にあの木が教えてくれたんだとすると、本当に不思議な木だよね」
「そうだな…」
浩介は、明美の言うことを信じていないわけではなかったが、偶然、例の気配と被ったタイミングだったとか、そんなものだろうと軽く思っていたのだ。
そう。この時には…。
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