3 家族の危機

2/2
前へ
/14ページ
次へ
 それは、明美の話を聞いた数日後のことだった。  日曜日、明美は次男の(まこと)と買い物に出掛けていた。息子の新とテレビを見いて、浩介はそのまま眠ってしまい。気がつくと、テレビは消されていた。  浩介が大きく伸びをした瞬間。  あの木から、切羽詰まったような強い気配がしたのだ!  明らかに何か伝えようとする、その気配!  新は…?新はどこに行った……?  浩介は、慌てて新の名前を呼びつつ、 家の中を探し回った。  そして、2階の部屋のドアを開けた時、新はイスの上に立ち、開けた窓の外へと手を伸ばしていたのだ!  窓の縁を掴んでいた手が滑り、新の身体が窓の外へと大きく傾く!  「新!!!」  浩介は、がむしゃらに走り、新の身体を両腕で抱えると、間一髪の所で部屋へと新を引き込んだ。  自分の荒い呼吸と、一気に跳ね上がった心臓の音が身体の中を暴れ回る。  腕の中に抱え込んだ新を抱えて、壁に寄り掛かる。  「新!怪我はないか?」  幸い息子は、何も怪我などはしていないようだった。  「このバカ!!一体何をしてたんだ!!」  浩介の怒鳴り声に、放心状態だった新の顔がくしゃっと歪むと、火がついたように泣き出す。  「良かった…本当に良かった…」  元気な息子の泣き声を聞きながら、浩介は再び息子を抱きしめた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加