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それは、明美の話を聞いた数日後のことだった。
日曜日、明美は次男の真と買い物に出掛けていた。息子の新とテレビを見いて、浩介はそのまま眠ってしまい。気がつくと、テレビは消されていた。
浩介が大きく伸びをした瞬間。
あの木から、切羽詰まったような強い気配がしたのだ!
明らかに何か伝えようとする、その気配!
新は…?新はどこに行った……?
浩介は、慌てて新の名前を呼びつつ、 家の中を探し回った。
そして、2階の部屋のドアを開けた時、新はイスの上に立ち、開けた窓の外へと手を伸ばしていたのだ!
窓の縁を掴んでいた手が滑り、新の身体が窓の外へと大きく傾く!
「新!!!」
浩介は、がむしゃらに走り、新の身体を両腕で抱えると、間一髪の所で部屋へと新を引き込んだ。
自分の荒い呼吸と、一気に跳ね上がった心臓の音が身体の中を暴れ回る。
腕の中に抱え込んだ新を抱えて、壁に寄り掛かる。
「新!怪我はないか?」
幸い息子は、何も怪我などはしていないようだった。
「このバカ!!一体何をしてたんだ!!」
浩介の怒鳴り声に、放心状態だった新の顔がくしゃっと歪むと、火がついたように泣き出す。
「良かった…本当に良かった…」
元気な息子の泣き声を聞きながら、浩介は再び息子を抱きしめた。
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