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「親父……」
「紫月――。ずっと……抱き締めてやりたかった。思い切り甘やかしてやりたかった」
「ンな……の、俺ン方こそ……親父の背負ってきたもんを……全然気付かずにのうのうとしてて……」
馬鹿だ、俺――!
「ごめんな、親父……。俺、俺……」
ポロポロと美しい頬を濡らして紫月は泣いた。
「謝るのは私だ、紫月。よくぞ今まで厳しい稽古にもついてきてくれた。結果として、お前は私の意を汲み取ってくれた。先程の剣捌き、実に見事であった。今、こうして皆が無事でいられるのもお前のお陰だよ」
「親父……!」
飛燕は思い切り紫月を腕に引き寄せ、その思いの丈を吐き出すように万感込めて抱き締めた。強く強く、二十四年分の思いをすべて捧ぐように抱き締めたのだった。
そんな二人を囲みながら、皆もまた誘い涙に男泣きを噛み締める。とかく遼二にとっては紫月さながらにあふれ出る涙を抑え切れなかったようだ。
(良かったな、紫月――! 親父さんと心が通じ合えて、本当に良かった……!)
拭い切れない涙に焔がそっとハンカチを差し出す。
誰の胸にもあたたかな灯が点る、そんな瞬間だった。
ひと時、泣き濡れた後に紫月がハタと気付いたようにして父の飛燕を見つめた。
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