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「おそらくは――。私は裏の世界のことについては素人だが、この遊郭街へ来てからというもの、あの男のすぐ側で過ごしてきた。ヤツは大概の取り引きの際には用心棒として私を側に置いてきた。そんな中で度々耳にしたのがデスアライブという名だった。おそらくヤツは組織の中において中堅か、その下辺りに位置していたのではないかというのが私の印象だ」
羅辰は組織に関する者たちが訪ねて来た際、いつもボスという存在に気を遣っているように見えたという。
「この遊郭街でヤツが奔放にしていられたのも、組織という後ろ盾があってのことだろう。ヤツはここで稼いだ金を組織に上納し、少しでも立場を良くしようと必死のようだった」
と同時にボスという存在を恐れていたようにも思える、飛燕はそう言った。
「おそらくヤツが逃げ込むとすれば組織だろう。ただし――今回のことで失脚したも同然の羅辰を組織が寛容に扱うかは保障できんところだ」
もしかしたらしくじったことで上から消されてしまう可能性も高いだろうと飛燕は見ているようだ。
「だからヤツを逃したというわけか――」
逃したところでおそらくは黙っていても始末される運命にあるだろう羅辰を、わざわざ自分たちの手を汚してまで討ち取る必要はないということだ。
「まあ、ヤツを捕まえておけば組織の実態について何かしら聞き出せることがあったやも知れんがね」
ただし、羅辰が知っている実情などそれこそ大したものでもないだろうというのも事実だろう。
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