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「良いのです。私は元々坊主になる気はございませんでしたのでな。それに、実家は既に父の師弟が住職となって立派に継いでくれており、何も心配はございません。私は余生を――人生の半分を生きたこの香港で息子ともども全ういたしたく、皇帝様にはまたお世話をお掛けすることと存じますが、是非ともここに置いていただければと願う次第にございます」
丁寧に頭を下げた父子に、焔は恐縮してしまった。
「どうか頭を上げてください! お二人にご助力いただけるのでしたら、有り難くこの上ない幸甚に存じます」
何とも丁寧過ぎるやり取りを繰り返す飛燕と焔に、息子の紫月は朗らかな表情で悪戯そうに笑ってみせた。
「皇帝様、これからも世話を掛けるがよろしくなぁ!」
「紫月、もちろんだ! 俺の方こそよろしく頼む!」
固く握手を交わし合う二人を横目に、更なる嬉しい報告がなされた。
「焔、俺と遼二もな、しばらくはこの香港で厄介になることにした。俺の方は遊郭街を無事に立て直すまでの間だが、この遼二の方は――」
「カネの方は……? なんだ」
「遼二の方はお前さんの元に置いてやってもらえんだろうか」
「カネを……ここに?」
「どうやらこいつは俺の下に居るよりお前さん方と未来を共にしたいそうだ」
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