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遼二は一之宮父子と共にここひと月の間は日本に帰っていたわけだが、戻って来てみると未だ老人と冰が焔の邸で暮らしているらしいことを知って、驚かされたというところだった。
「それなんだがな――冰と爺さんには引き続きここで住んでもらうことにしたのだ。爺さんにとってもカジノに通うにはここからの方が断然近い。それに、あのボウズにはいろいろと不憫な思いをさせてしまったからな。婚姻云々は置いておいても……俺の邸で暮らす方が居住区にいるよりは多少なりと楽もさせてやれると思ってな」
「では……今後も引き続き共に暮らすというわけか」
「まあ、そういうことだ」
ポリポリと頭を掻きながらも焔の頬がわずか朱に染まったように思えて、遼二は思わず瞳を細めてしまった。
「こいつ……俺と紫月のことをどうこう言えた義理じゃねえな?」
「いや、その……まあな。ボウズにとっても憂いが無くなったからといって、さあ家へ帰れと言うのも酷な話だろうが。既に引っ越しも済んでいたことだしな……。このままここで暮らしてはどうかと俺が提案したわけだ」
「つまりは――なんだ。おめえもあのボウズを手放すのが惜しくなったというわけか」
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