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それからひと月も経つ頃には遼二の事務所となる建物の棟上げも済んで、新しい体制に向かい歩み出していた。
もしかしたら街自体が消滅してしまうかと思われていた遊郭街の方も、引き続きここに残って生きていきたいと言ってくれた者たちによって、何とか再建の目処が立ち始めていた。
各妓楼の主人らにしてみれば、今更この稼業以外に移れと言われたところで逆に路頭に迷ってしまう。是非ともこのままここでの生活を続けていきたいと申し出てくれる者が殆どだった。そして、それは遊女や男娼にしても同じくだった。色を売るということに関しても、誇りをもってやっていきたいと言う者もいた。彼ら曰く、実のところ他の仕事よりも稼げるこの仕事は魅力であるし、客との駆け引きなどが楽しいのだと言ってくれる者もいたそうだ。女衒による強制的な拉致は撤廃され、遊郭街は新たな未来に向かって漕ぎ出そうとしていた。
紫月は男遊郭を治める長として正式に就任し、菫もこれまで同様その補佐に就くことが決まった。女遊郭の方も頭を務めてきた酔芙蓉という女が引き続き遊女らを束ねる長となった。
飛燕もまた、息子の紫月を補佐しながら遊郭街の揉め事の仲立ち役としてお役目様を続けるそうだ。
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