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「まあいいわ。分かればいいのよ。ところであなた、フレイからアタシのことは聞いていなくて?」
「いえ……」
「そう。だったら今教えてあげるわ。アタシと彼はね、大人の付き合いをしている仲なの」
「大人の付き合い……」
「学生のあなたにはまだよく意味が分からないかしら? いわゆる男女の仲っていうこと! ずっと懇意にしていたし、デートもしてたわ」
男女の仲――という意味はなんとなく想像でしか解らないが、デートの方は理解できる。つまりこの女性は焔の恋人ということなのだろうか。冰はそう思った。
「あの、お姉さんは焔……いえ、皇帝様の恋人さんですか?」
恋人という言葉に気を良くしたのだろうか、女は先程までとは打って変わって機嫌の良さそうに笑顔まで浮かべてよこした。
「まあね、そんなところよ。だけどね、ここ最近は満足に会うことさえ叶わないわ。原因はあなた! あなたが来てからというもの、フレイは忙しい忙しいってばかり言って、デートのひとつもできやしないのよ!」
つまり、女が言いたいことはこうだ。冰が皇帝邸に住むようになったことで、焔から相手にされなくなってしまった。イコール邪魔な存在だという意味なのだろう。
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