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「皇帝様、紫月兄様からです」
冰から受話器を渡されて電話に出ると、紫月の明るい声音が耳元を喜ばせてくれた。
『皇帝様! 今、遼から連絡あってさ、老黄の方には事情を伝えたって! 老黄はお邸に戻ることを承諾してくれたってよ!』
「――爺さんが? そうか、良かった! 世話をかけたな」
焔の声も思わず裏返るほどに逸る。
『そっちはどう? 冰君は何だって?』
「うむ、これからすぐにも連れて帰りたい――」
『そっか! 良かったぜ』
「紫月、ありがとうな。帰ったら改めて礼を言うが、カネやレイさんたちにもありがとうと伝えておいてくれ」
『オッケー! んじゃ、お邸で待ってる!』
紫月との通話を済ませると、焔はじっと冰の瞳を見つめながら言った。
「冰、共に帰ろう」
「皇帝様……」
「もう一度言うが、無理強いする気はない。お前さんの本当の気持ちを聞かせて欲しい」
「僕は……嬉しいです。皇帝様のお側に居たいです」
「そうか。ありがとうな、冰。心配をかけてしまってすまなかったが、今後はそんな思いをさせねえと約束する。ずっと俺の側にいて欲しい」
「はい。はい……皇帝様!」
「冰――。焔だ」
やさしく髪を撫でながらそう言われて、「え?」と目の前の焔を見上げる。
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