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「じいちゃん、元気でいるでしょうか。身体を壊していなければいいのですが……」
その表情を見ただけでもやはり老人同様、互いのことを気に掛けて大切に思っているのが窺える。血の繋がりは無いにしても、本物さながらの家族であることは間違いないのだろう。焔は何とかしてこの哀れな少年を救い出してやりたいと強く思うのだった。
「冰といったな? 実はお前さんをここから連れ帰る方法を考えてみたのだ」
焔は先程紫月と話し合った救出方法を丁寧に説明してみせた。当然だが冰は驚いたようだ。
「結婚……ですか? あの……皇帝様が僕と?」
言われている意味がよく理解できないというわけなのか、冰は形のいい大きな瞳をまん丸く見開いてはポカンとした表情で固まっている。
「驚くのも無理はねえ。言うまでもねえが、お前さんも俺も男同士だ。婚約だの結婚だのといっても、なかなか想像できんことではあろうがな。いずれにせよこの遊郭街にいるとなれば、見ず知らずの客を取らされることになろう。もちろん色を売るという行為も避けては通れん。それよりもこの俺の元へ輿入れする方がお前さんにとっては幾分マシなはずだ。黄の爺さんも安心するだろう」
焔は、輿入れするといっても形の上だけで構わないし、世間一般でいうところの本物の夫婦のようにして過ごさずともいいのだからと言った。
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