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「まあ表向きは夫婦となるわけだから、お前さんには俺の邸で共に住んでもらうことになるが、これまで通り学園にも通えるし黄の爺さんと会うのも自由だ。というより、爺さん共々引っ越して来てくれりゃあいい」
どうだろう、婚姻という形を取って自分の元で一緒に暮らさないかと訊いた焔だったが、まさか当の冰から意外な答えを聞くことになろうとは思わなかった。なんと冰はその申し出を断ったからだ。
「……そうか。やはり気が進まんか……」
まあ婚姻となれば人生を左右する事柄だし、会ったばかりの人間――しかも同性相手となれば断っても当然だろう。いい手だとは思ったが、やはり別のやり方を考えるべきかと思った時だった。冰がこの話を断る理由を聞いて、焔は驚かされることとなった。
「あの……皇帝様……。お気持ちはたいへん有り難く思います。僕のような者の為に皇帝様がそんなことまでお考えくださるなんて……驚きと有り難さでお礼の言葉もございません。ですが、皇帝様の人生を僕の為に犠牲にするなんて……そんなことはできません!」
「ボウズ……お前……」
「確かに――ここへ連れて来られたことは僕にとっても驚きですし、ここで生きていきたいわけではありません。でもその為に皇帝様を巻き込むだなんて……」
僕には絶対にできません! きっぱりと冰は言った。つまり、有難い話ではあるがそれに甘んじていいとは思わないということだ。
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