美しき少年との出会い

7/14
362人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「――では、お前さんはこの俺と夫婦になるのが嫌なわけではないのだな?」 「嫌だなんて……! とんでもございません。こんな一般市民の僕に……そのようにお心を砕いてくださるお気持ちは本当に有り難くてなりません。ですが僕の為に皇帝様の未来ある人生を取り上げてしまうことなどできません!」  カタカタとか細い身体を震わせながらうつむいては、ギュッと拳を握り締める。その様から察するに、ここで客を取って生きていくことになろう己の運命を喜ばしくは思っていないことだけは分かる。だからといって他人の人生を捻じ曲げてまでそれから逃れていいとも思ってはいないということだ。  (イェン)はますます何としてでもこの哀れな少年を救い出してやりたい――そう思ってやまなかった。 「ふむ、だったら俺を好きになってみる――というのはどうだ?」 「は――?」 「確かに偽の婚姻では味気ない。だから俺はお前さんを好きになる。お前さんは俺を好きになる。互いに本当の恋をすればいいのだ」  (イェン)の意外過ぎる言葉に、冰はポカンとした表情で固まってしまった。大きな瞳をパチクリとさせたまま、唖然としたように言葉を失っている。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!