美しき少年との出会い

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「あの……! 皇帝様」 「ん? なんだ」 「あの……皇帝様が僕のような者の為にそのようにお心を砕いてくださることは本当に有り難く存じます。本当に……皇帝様のもとへ嫁がせていただけるのでしたら有り難くお言葉に甘えさせていただきたいとも思います。ですが、皇帝様には大切なお方がいらっしゃるはず……。ですから僕のことは……お、お妾さんとして形だけでもお側に置いていただけると幸いです。本当の奥方様には極力ご迷惑にならないよう心掛けて参りますゆえ……」  つまりこの冰は、(イェン)には当然心に決めた相手がいると思っているようだ。ここから助け出す為に偽とはいえ婚姻関係を結んでもらう厚意を受け入れたとしても、それ以上の迷惑は決してかけないからという意味なのだろう。  まだ十七歳と幼いながらも、そんなことにまで気を回すこの少年の心根が可愛らしく思えてか、(イェン)は自然と頬がゆるんでしまう高揚感が心地好くも感じられていた。 「ボウズ、俺がお前さんを妾という立場にすると思うのか?」 「あ……いえ、あの……こ、皇帝様は僕をここから救い出してくださる為に結婚という形を取ってくださるのですよね? それだけでもたいへん恐縮ですのに、その上奥方様にご迷惑をお掛けするようなことがあっては申し訳なさすぎます。ですので……その」  冰の言いたいことはよく分かるが、なにぶん上手くは言葉にならないようだ。(イェン)はまたしても笑みを誘われてしまった。
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