美しき少年との出会い

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「お前さん、まだ十七の割にそんなことまで気を回すとは驚きだな。だが案ずることはない。そもそも俺は独り身なのでな、お前さんを妾にする必要なぞないということだ」  (イェン)の言葉に冰は驚いたようにして大きな瞳を見開いた。 「え……? そうなのですか?」  うそ、そんなに格好良いのに――! とでも言いたげにポカンとした表情でいる。 「俺が独身なのがそんなに珍しいか? これでもまだ三十路前なのだがな」  やれやれと苦笑が浮かんでしまう。 「とにかく――だ。さっきも言ったが、結婚といっても必ずしも普通の夫婦のように過ごさずとも良いのだ。俺の妻になれば結局はここの遊郭で色を売るのと同じようなことも必要と思っているやも知れんが、共に暮らすというだけでこれまでと何ら変わりはねえ。お前さんは今まで通り学園に通い、(ウォン)の爺さんと共に安泰で暮らせる。言うなれば俺の弟になると思えばいい」 「……弟……ですか?」 「そうだ。何も心配することはねえ」  要は結婚したからといって床を共にしたり、情を交わすなどの必要はないのだと説明する。ただし、人前に出た時だけは『夫婦』として仲睦まじく装ってくれると有り難いぞと言って(イェン)微笑(わら)った。  その笑顔がそこはかとなくやさしげで、元々の男前な顔立ちを更に甘く引き立ててか、急にドキドキと高鳴り出す心臓音が陶酔へと誘うようだ。冰は礼の言葉もままならずにうつむくのが精一杯であった。
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