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「あ……りがとうございます。本当に……何と申し上げてよろしいか」
「ではこの話、受けてくれるのだな?」
「は――。皇帝様が本当にそれでよろしいのでしたら……」
「いいに決まっている。俺もお前さんのような弟を持つことができると思うと嬉しいのだ」
「皇帝様……」
「うむ、ではこれからよろしく頼むぞ」
「……こちらこそ……! よろしくお願いいたします」
冰は立ち上がると、最初に見た時のように深々と腰を下げては、「多謝、皇帝」と言って胸前で手を合わせた。心から感謝をいたしますという意味だ。
その姿、仕草の逐一が可愛らしく思えて、焔は自分に弟がいたとしたらこのような気持ちになるのだろうかなどと胸があたたかくなるのを心地好く感じていた。
何はともあれ、婚姻という形をとって遊郭街から救い出すという計画に合意できたところで、焔はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
「ところでボウズ。お前さん、ここへ連れて来られた際のことだが――。どのような経緯だったのかを詳しく教えて欲しい。誰かに無理矢理拉致されたのだろうことは想像がつくが、それはいつだったのか、またお前さんを連れ去った者は何人で、どんな者たちだったのかということをだ」
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