美しき少年との出会い

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 日中は学園生活同様の授業のようなものを受けさせられ、夜は既に男娼として客の相手をしている先輩たちの手伝い方々、座敷での立ち居振る舞いなどを見学させられていたそうだ。  教えられる内容は一般高校の教育とは違い、政治経済と語学のみを徹底的に叩き込まれたという。ただし冰は元々日本人の夫婦の子として生まれた――いわゆる日本人だ。生まれ育ったのはこの香港だが、そんなわけで広東語に英語はもちろんのこと、日本語も流暢だったので、語学という点ではさほど苦労はなかったという。他の者は特に日本語の点で苦労していたそうだ。 「ふむ、そうか――。政治経済に語学ね。お前さんがいた北宿舎の連中は皆そうだったわけか?」 「はい。住む部屋はそれぞれ個室で、宿舎と呼ばれていました。僕の部屋は四号室ということで、北四番と呼ばれています。北宿舎に住む者たちは同じ教室で授業を受けますが、夜の兄様(あにさま)方のお手伝いの時は二、三人一組に分けられて別々のお座敷で見学でした」 「なるほど――」  つまり北宿舎に集められた者たちは、ゆくゆく高級男娼として売り出される――いわば見目の良い者たちのグループだったに違いない。政治経済や語学を叩き込み、政財界や社交界で立場のある太客を満足させられる質の高い男娼に育て上げる為であろう。
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